99.4.18 ジャビルカ通信 第94号

99.4.18 ジャビルカ通信 第94号

 京都会議(世界遺産委員会)以降のジャビルカ開発問題をめぐる動きを、日をおっ
てメモしておきます。それぞれの事項について、詳しいことをお知りになりたい場合
は、細川までお問い合わせください。
12月1日 ジャビルカ鉱山の採掘準備工事の即時停止を求めた
      フランス提案が、世界遺産委員会本会議において
      20対1で採択される。また、ユネスコのカカドゥ
      現地調査報告(フランチオーニ報告)が承認される。
      (日本政府もフランス提案に賛成票を投じる。)

12月2日 ミラル氏族を代表してイボンヌ・マルガルラさんら
      が大阪の関西電力本社に抗議におとずれる。関電の
      守衛から「敷地に立ちいらないで下さい」と言われ
      イボンヌさん「それなら、あんたたちも私の土地か
      ら出ていきなさい」と応じる。 

12月3日 タスマニア州政府が、世界遺産委員会の勧告を受け
      いれてジャビルカの工事を停止するようオーストラ
      リア連邦政府に要求。      (ABC放送)

12月4日 ダーウィン治安裁判所にて、映画『ジャビルカ』が
      証拠採用され、法廷で上映される。ブロッケードで
      7月に逮捕された被告が証拠申請していたもの。
                      (ABC放送)

   【注】ブロッケードで逮捕された総計500名以上におよ
      ぶ人々のうち、略式起訴・罰金に応じた人を除く約
      40名の裁判が、12月から3月にかけておこなわ
      れた。ほとんど有罪(罰金)判決をうけるが、起訴
      嫌疑によっては証拠不十分として起訴が却下される
      ケースも少なからずあった。

12月5日 世界遺産委員会京都会議閉幕。ジャビルカ開発工事
      の停止をもとめた12月1日の決議が議事録として
      承認される。また、IUCN(世界自然保護連合)
      などユネスコの公式諮問3機関が提出した意見書
      (カカドゥ国立公園をただちに世界危機遺産に登録
      すべきとの内容)が議事録の公式付帯文書として
      認定される。

12月6日 ジャビルカ開発の即時中止を求めて、メルボルンで
      約4000人がデモ。京都から戻ったばかりのジャ
      ッキー・カトナがかけつけてスピーチ。また、ジャ
      ビルカ・ブロッケードで逮捕されたなかで最高齢の
      オルヴィー(91才、女性)もスピーチ。「オース
      トラリアは核燃料サイクルから手をひこう」と訴え。

12月6日 豪州カトリック教会社会正義協議会(ACSJC)が
      ジャビルカ鉱山計画を「道義的に許容しえない」と
      する声明を発表。
            (シドニー・モーニング・ヘラルド紙)

   【注】ACSJCはオーストラリア全国のカトリック教会の
      司教が構成する組織で、カトリック教会の立場を
      公的に代表する。オーストラリアでもっとも有力
      な宗教はイギリス国教会(アングリカン・チャー
      チ)だが、これは離婚を認める点以外、中味はカ
      トリックと同じなので、豪州社会におけるカトリ
      ック教会の発言力・影響力は非常に高い。

12月14日 ERA社がレンジャー鉱山(ジャビルカ工区に隣
      接するウラン鉱山、関西電力・九州電力などにウラ
      ンを供給)の20%減産を発表。ウラン国際価格の
      長期低落が回復しないことを受けた措置。ジャビル
      カ開発は将来の価格上昇に期待して継続する、との
      見解を示す。          (ABC放送)

12月15日 ジャビルカ開発に出資するウェストパック銀行に
      対する抗議デモが繰り返される。 (ABC放送)

12月21日 連邦環境大臣ロバート・ヒルがカトリック教会に
      書簡。先住民族問題というデリケートな問題を使っ
      てジャビルカ問題を混乱させた、と教会を強く非難。
                (キャンベラ・タイムズ紙)

12月22日 カトリック教会のケヴィン・マニング司教(ACS
      JCの議長)は、ジャビルカ開発計画への反対をあら
      ためて表明。先住民族政策における連邦政府の不誠
      実を批判。           (ABC放送)

1999年
1月12日 ERA社、ジャビルカ鉱山の操業開始を2001年
      からにすると発表。従来は2000年開山を予定し
      ていた。   (ファイナンシャル・レビュー紙)

1月13日 南アフリカのケープタウンで1月10日から開かれ
      ていた第4回世界考古学会議において、カカドゥ国
      立公園におけるウラン開発計画に憂慮し、開発工事
      をただちに中止するようオーストラリア政府に要請
      する決議が採択された。この会議には、70ヶ国か
      ら800名以上が出席した。
      (ニューサウスウェールズ大学考古学科からの情報)

1月14日 オーストラリア環境教育協会 (AAEE) の隔年大会が
      シドニーで開かれた。連邦環境大臣であるロバート・
      ヒル上院議員が来賓として挨拶したが、そのすぐ後、
      若い参加者を代表してフロール・チャップマンさん
      が、カカドゥ国立公園でのウラン採掘を推進する連邦
      環境省の政策を批判するスピーチをして、会場から
      拍手喝采をあびた。   (環境教育MLより)
      
   【注】フロールは、ジャビルカ・ブロッケードに参加した
      女子学生。映画『ジャビルカ』の最後のほうでイン
      タビューに登場します。

1月18日 ヒル環境相がユネスコに意見書を送付。IUCNの
      97年9月の報告書を引用し、世界遺産地区の周辺
      で鉱山開発がおこなわれている事例は100件以上
      あることを指摘。カカドゥ国立公園ばかりが問題に
      されるのは不公平であると主張。
                (ジ・オーストラリアン紙)

   【注】IUCNの報告書を使うあたり、苦肉のレトリック
      ですが、カカドゥ国立公園のケースが他の多くの事
      例のテストケースになる、という観点から京都会議
      での議論が熱をおびた、という文脈をまったく無視
      したカマトトなお手紙です。

1月18日 ヒル大臣の上記の見解に対し、グンジェイミ先住民
      族法人は、ユネスコによる現地調査が世界遺産条約
      の求める基準に即して実施されたという事実を環境
      大臣がまったく無視している、と批判。
                      (ABC放送)

1月20日 ダーウィン治安裁判所にて、ウラン鉱山における労
      働者のラドン・ガス被曝によるガン多発について、
      フィリップ・ニチュケ医師が証言。(ABC放送)

   【注】ニチュケ医師は北部準州における安楽死の法制化を
      推進した医師として有名。

1月22日 ERA社、98年度下半期の収支を公表。収益は
      540万豪ドル(約400億円)で、50%の減益。
      オーストラリア自然保護基金(ACF)は、ジャビ
      ルカ開発計画へのこだわりがERA社を自滅に追い
      込む だろう、とコメント。   (ABC放送)

1月26日 オーストラリア建国記念日。アボリジニーにとって
      「侵略の日」(The Invension Day)。各地でミラル
      (ジャビルカ・アボリジニー)を支援する集会やデ
      モがおこなわれる。

2月3日  北部準州労働党(野党)の党首交替にともない、同
      党は、ウラン開発をめぐる立場の変更をふくむ政策
      見直しにはいった。       (ABC放送)

   【注】労働党は連邦レベルでは、ウラン開発抑制(新規
      開発の禁止)を政策としており、ジャビルカ開発
      にも反対しているが、北部準州の党組織はウラン
      鉱山を容認し、ジャビルカ開発計画も原則的には
      認める立場をとってきた。今後、連邦レベルにあ
      わせて開発抑止に政策転換するかどうかを党内で
      検討するという。

2月8日  北部準州最高裁は、イボンヌ・マルガルラさんに対
      し、ジャビルカ開発許可取消訴訟にともなう裁判費
      用の支払いを命じた。イボンヌさんは、北部準州政
      府とERA社を相手どって、ジャビルカ鉱山の開発
      許可の無効をうったえていたが、昨年敗訴。
                      (ABC放送)

2月9日  グンジェイミ先住民族法人のジャッキー・カトナ事
      務局長は、連邦政府が保健および住宅改善にむけた
      緊急支援の提供を連邦政府がミラル氏族(ジャビル
      カの土地権をもつ先住民族)に申し出ていることを
      公表。ミラル側はこれを受け入れず。
                      (ABC放送)

2月16日 カカドゥ国立公園がユネスコ世界遺産条約の「危機
      遺産」に指定されるのを防ぐため連邦政府が100
      万ドルをかけた国際的ロビー活動を準備しているこ
      とが判明。連邦環境省の内部文書(ジャビルカ通信
      90号参照)がリークされ、有力各紙のトップを飾
      った。連邦政府のダウナー外務大臣は、オーストラ
      リアの国益のためだ、としてロビー活動計画を擁護。
      ジャッキー・カトナは、カカドゥの開発はむしろ国
      益に反する、と批判。     (ジ・エイジ紙)
                (ジ・オーストラリアン紙)
           (シドニー・モーニング・ヘラルド紙)
                      (ABC放送)

      シドニー・モーニング・ヘラルド紙は、上記のロビー
      活動計画において、オーストラリア政府が世界遺産
      委員会パリ会議(99年7月)での投票(カカドゥ
      国立公園を危機遺産に指定する件につき反対票を投
      じてもらうこと)の交換条件として、他の国際会議
      でオーストラリアの票を提供するというかたちの説
      得工作を外務省がおこなっている、と報道。

   【注】この100万ドルの予算というのは、環境省の分
      だけであり、このほか外務省、産業科学資源省、
      通商省、司法省、首相府の予算も使用される模様。

2月17日 オーストラリア民主党(連邦上院の均衡票をにぎる
      政党)は、政府の国際ロビー活動計画が税金の無駄
      遣いであると批判。     (民主党記者会見)

2月18日 連邦上院は、ジャビルカ開発問題にかかわる政府文
      書のすべてを上院に提出するよう求めた決議を採択。
      この決議には法的拘束力がある。 (ABC放送)

2月23日 昨年5月の国際ジャビルカ行動の日に「不法侵入罪」
      で逮捕され(ジャビルカ通信16号参照)、9月に
      有罪判決(ジャビルカ通信66号、67号参照)を
      受けたイボンヌ・マルガルラさんの控訴審はじまる。
                      (ABC放送)

2月24日 メルボルンの「ジャビルカ行動グループ」(JAG)
      が『暴力からの自由』賞を受賞。首都キャンベラで
      授賞式。ジャビルカ・ブロッケードにおける非暴力
      不服従行動が評価されたもの。北部準州のダリル・
      マンジー資源開発大臣(そう、あの映画『ジャビル
      カ』に登場する大臣さんです)は、ブロッケードに
      対処した警官やERA社の警備員が暴行を受けたと
      して、『暴力からの自由』授賞委員会に対し、選考
      のやり直しを求める書簡を送った。
                      (ABC放送)

2月26日 ジャッキー・カトナとクリスティーン・クリストフ
      ァースンがダーウィン市内の刑務所に収監される。
      ブロッケードで逮捕された際の罰金の支払いを拒否
      したため(ジャビルカ通信85号で既報)。

3月2日  連邦政府のロバート・ヒル環境相、カカドゥ地域の
      アボリジニー土地権代表者たちと会見。カカドゥ国
      立公園の運営体制の見直しについて協議(ジャビル
      カ通信29号参照)。公園の管理運営委員会に北部
      準州政府代表をあらたに参加させるとする連邦政府
      の提案にアボリジニー側は反発。
                      (ABC放送)

3月3日  ヒル環境相、北部準州政府に対し、「カカドゥ地域
      社会的影響評価報告書」(KRSIS)の勧告の実施を
      急ぐように要請。        (ABC放送)

  【注】 KRSISはウラン鉱山がカカドゥ地域のアボリジニ
      ー社会に与えた影響を総合的に調査した公的報告
      (97年)。教育・保健・住居・雇用などの分野
      でのおおはばな改善を求める勧告がなされた。
      (勧告内容については、ジャビルカ通信91号と
      92号で紹介したユネスコの報告書を参照のこと)。

3月8日  ジャッキーとクリスティーン、釈放。
              (ジャビルカ通信88号で既報)

3月9日  ドイツ緑の党の党大会でアボリジニー・ゲストが講
      演(マイクル・アンダースン氏)。ジャビルカ開発
      の強行や先住民土地権の縮小など、オーストラリア
      連邦政府の施策を批判。緑の党は、オーストラリア
      からドイツへのウラン輸入を中止する方向で、連立
      政権内の協議をすすめることを確認。
                     (ジ・エイジ紙)

  【注】 オーストラリアはドイツの原発で使われるウラン
      の20%を供給している。

3月11日 ロバート・ヒル環境相が世界遺産委員会の松浦晃一
      郎委員長に書簡。カカドゥ/ジャビルカ問題を評価
      するための新しい専門家パネルの設置を要請。ユネ
      スコは通常、愛UCN(国際自然保護連合)に自然
      保護に関する専門意見を諮問しているが、ヒル大臣
      はIUCNがジャビルカ問題に関して「偏向してい
      る」と批判。          (ABC放送)

  【注】 IUCNの信頼すべき情報筋からの情報によれば、
      松浦委員長はヒル大臣への返書で、ユネスコが今後
      もIUCNの助言を尊重していく立場であることを
      伝えた模様。

3月17日 カカドゥ国立公園の管理運営委員会は、北部準州政
      府代表を委員に加えるとする連邦政府提案を受け入
      れる条件として、委員会の法的権限の強化を要請。
      連邦上院の生物多様性法案に関する公聴会の席上、
      同委員会のミック・アンダースン委員長が陳述した
      もの。             (ABC放送)

  【注】 ヒル連邦環境相は、この条件を検討すると述べた
      ものの、アボリジニーによる公園管理の強化につ
      ながるため、連邦政府がこのような交換条件に応
      じる余地は小さいと思われる。

3月18日 連邦政府(自由党+国民党の連立政権)がジャビルカ
      開発計画をひきつづき推進することを、ニック・ミン
      チン資源大臣があらためて表明。 (ABC放送)

3月20日 ERA社がジャビルカ工区内のアボリジニー岩絵につ
      いて、保全資金を措置し、ミラル氏族による管理を認
      める申し出をしていることが判明。オーストラリア自
      然保護基金(ACF)は、この申し出を先住民族を懐
      柔して騙そうとするものだ、と批判。
                      (ABC放送)

3月22日 ダーウィン治安裁判所にて、昨年のジャビルカ・ブロ
      ッケードで逮捕された人々の裁判が続く。この日の公
      判では、6つの罪状で起訴された3名の被告について、
      「鉱山破壊罪」など4つの罪状が却下され、「公務執
      行妨害」「不退去」の2つの罪状について有罪認定。
                      (ABC放送)

3月24日 連邦上院は、2月18日の上院による文書提出命令に
      従わなかったとして、ヒル環境相を問責決議。環境大
      臣が問責決議されたのはオーストラリア憲政史上はじ
      めて。             (ABC放送)

3月28日 メルボルンで約2500人が参加して、ジャビルカ開
      発の即時中止を求めるデモ。  (ジ・エイジ紙)

   【注】かつてオーストラリアで反核運動が華やかなりし頃、
      イースター前の日曜日(パーム・サンデー)には、
      いつも大規模な反核市民行進がおこなわれていた。
      ジャビルカ開発問題を契機にこの「伝統」が復活し
      たことは興味深い。

3月29日 メルボルン市中心部にあるノース社本社ビルをジャビ
      ルカ開発反対のデモ隊約200人が前日の夜から封鎖。
      このノース社ブロッケードは3月はじめから予告され
      ていたもの。現場には、騎馬警官20名をふくむ警官
      約100人が配置されたが、初日は大きな混乱はなく、
      ノース社の社員の多くは社屋に入ることができず、事
      実上の業務停止に。同社はジャビルカ開発工事をすす
      めるERA社の筆頭株主(ジャビルカ通信3号、68
      号参照)。           (ABC放送)
                     (ジ・エイジ紙)

3月29日 ウラン輸出が今後5年間で収益倍増するとの予測。オー
      ストラリア政府農業・資源経済局のトム・ウェアリン
      氏がダーウィンで開催中の全国ウラン・サミットで見
      通しを述べたもの。主にアジアへの売り込みを見込ん
      でいる。            (ABC放送)

3月30日 ブロッケードの続くメルボルンのノース本社前で、封
      鎖のデモ隊と警官隊が衝突。騎馬警官が往来を確保して、
      ノース社員の一部は「通勤」を果たす。逮捕者はなく、
      ブロッケードは継続。      (ABC放送)

4月1日  ノース社ブロッケード終了。ノース社広報室は、ジャ
      ビルカ問題についての「話し合い」を提案。
                      (ABC放送)

4月13日 オーストラリア全国でウェストパック銀行に対する
      抗議行動がおこなわれる。ブリズベーンでは、逮捕
      者(公務執行妨害)も。同銀行はジャビルカ開発へ
      の出資がかねてから批判されてきた。
                      (ABC放送)

4月15日 オーストラリア連邦政府が、ジャビルカ開発問題に
      ついてユネスコに提出する報告書を公表。これは、
      京都会議で世界遺産委員会から要請された3つの報
      告書のうちの最初のもの。報告書の全文はオースト
      ラリア連邦環境省のホームページで公開されている。
      その内容はひとことでいえば: ジャビルカ開発に
      は環境保全上、社会文化上の問題は何もなく、問題
      を指摘したユネスコ現地調査団の報告(前述のフラ
      ンチオーニ報告)は誤謬と偏見に満ちている、とい
      うもの。 
      野党(労働党、民主党、緑の党)、環境団体、反核
      団体、ミラル氏族(グンジェイミ先住民族法人)ら
      は、まったく事実に反し、国際関係を損なうものだ
      として政府報告書を激しく批判。 (ABC放送)
                (ジ・オーストラリアン紙)

     ★オーストラリア政府が、ユネスコと真っ向から対決
      する姿勢を示したことで、ジャビルカ開発/カカド
      ゥ国立公園保全問題はさらに紛糾することに。

 

######################################

★映画『ジャビルカ』の上映会を各地でこころみてください。
解説資料その他、お問い合わせいただければ提供します。

★大阪での次回上映会は、4月22日です。

######################################
キャンペーン事務局   <hosokawk@cc.saga-u.ac.jp>
  840-8502 佐賀大学 農学部3号館 細川研究室
  tel&fax  0952-28-8738 
(郵便振替)01700-1-19686「ジャビルカ基金」
  ↑カンパはこちらへ・

キャンペーン・ホームページ: http://SaveKakadu.org

ミラル氏族のホームページ: http://www.mirrar.net

######################################

広告