2000.5.28 ジャビルカ通信 第121号
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┃ 南オーストラリア州のオリンピック・ ┃
┃ ダム鉱山で重ウラン酸アンモニアの ┃
┃ 漏洩が発覚。 続報次号。 ┃
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116号と117号で紹介したように、ジャビルカ開発をすすめるERA社の親会社であ
るノース社は、同社の経常収入の約1割を占めるウラン権益からの撤退を検討してき
ましたが、このほど撤退の方針がほぼ固まり、あとはERA社を誰がいくらで買い取
ってくれるか、という問題にほぼ絞られてきたようです。ノース社はERA社の株の
67%を所有しており、これを譲渡する相手がERA社の経営権を握ることになります
。譲渡価格は3億豪ドル(約190億円)前後と言われていますが、これにジャビルカ
製錬施設の建設費負担を加えると、ゆうに300億円を上回る買い物となるでしょう。
あまり考えたくない最悪のシナリオは、関西電力の子会社である「日豪ウラン資源
開発」(JAURD、圧力水型炉むけの燃料を買い付けて関電・四電・九電に供給している
) が買い取って開発計画を強行する、というもの。ノース側としては想定するシナリ
オのひとつでしょうが、関電筋の内部情報では、まずそれはないだろう、とのこと。
JAURDは、現在、ERA社の株の10%を所有し、レンジャー鉱山で採掘・製錬される
酸化ウランの4割前後を購入しています。
より可能性の高いのが、オーストラリアのもうひとつのウラン鉱山である南オース
トラリア州のオリンピック・ダム鉱山(=ロクスビー・ダウンズ)の所有者、ウェス
タン・マイニング社(WMC) が買い取る、というもの。ノース社はすでにWMCと実質的
な交渉に入っているとの情報もあります。
WMCは、日本へのウラン輸出(おもに沸騰水型炉むけ)を通じて日本の商社・電力
会社と密接な関係にあり、ウルトラCとしてWMCとJAURDが共同でERA社をひきとる
、というシナリオもあり得なくはありません。具体的にはJAURDがERA社への出資
比率を高めるということになります。これも今のところ、関電の側から望んでそうす
る、という事態は考えにくいのですが、望ましからぬ可能性として、一応、念頭にお
いておくべきでしょう。
さて、ここへきて急浮上してきたのが、ジャビルカ鉱山・レンジャー鉱山のすぐ南
に位置するカカドゥ第3のウラン開発区、クンガラ鉱床群の採掘権をもつフランス核
燃料公社(COGEMA、以下「コジェマ」と表記) です。コジェマはフランス国営企業で
、商業用および軍事用の核分裂物質の生産・輸送・加工・使用・再処理・廃棄物処分
を一手にうけおう核燃エージェントです。コジェマがジャビルカの権益に並々ならぬ
関心を示し、一部報道によれば、すでにノース社とERA社の譲渡交渉にはいってい
る、とのことです。
(http://www.smh.com.au/news/0005/19/text/business09.html —『シドニー・モ
ーニング・ヘラルド』紙の経済面)
コジェマは、すでにERA社の株を6~10%所有し、レンジャー鉱山から年間300
トン前後の酸化ウランを購入しています。(日本はこの約3倍を購入しています。)
(コジェマの株式占有率がはっきりしないのは、コジェマ自身が持つ株に加えて、コ
ジェマに経営権をにぎられている欧州の多国籍企業(複数)がERA社の株をもって
いるが、その比率が確認できないため。)
コジェマと日本がERA社の株を分け合うという、おぞましい近未来のシナリオが
見えてきます。 コジェマは、ながらく凍結していたクンガラ鉱山の開発計画も「解
凍」する動きをみせており、油断なりません。
クンガラ鉱区の地元アボリジニー(ジョック・グンジェイッミ氏族)は、開発反対
の立場をはっきりと表明し、これを受けて北部土地評議会(NLC)も当面は開発交
渉を仲介しない、との方針を4月に決定しています。開発推進側は、ジョック以外に
もクンガラの土地に権利をもつアボリジニー集団がいると主張し、それらのグループ
(ワラマル氏族、ミラル・ウネンガンク氏族など)に様々な「支援」をもちかけて、
事態を打開しようとしているようです。鉱山業界おきまり(おとくい)の分断策—
先住民族に仲間割れをおこして、その混乱を利用して開発をすすめようとする戦術–
-です。
株式市場では、「ノース社、ウラン事業から撤退」の情報が流れるや、同社の株は
値上がりを始めたそうです。ウラン開発はペイしない、というのが市場の健全な判断
です。開発側はややあせっているようで、核燃産業界のシンクタンクであるのウラン
情報センター(メルボルン)は最近、「オーストラリア・ウラン鉱業の経済性」(Min
es Paper No.4 “The Economics of Australian Uranium Mining”) というレポートを
出しましたが、いささか我田引水の内容です(http://www.uic.com.au/econ.htmで読
めます)。
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通信118号で御案内したメールマガジン『環境雑学マガジン』に連載の「豪州ウラ
ン開発問題と日本の関わり」第3回~第5回は、それぞれ次のアドレスで見ることが
できます。
http://www.kyoto-seika.ac.jp/newdi/kankyo/maga/magazin42.htm
http://www.kyoto-seika.ac.jp/newdi/kankyo/maga/magazin43.htm
http://www.kyoto-seika.ac.jp/newdi/kankyo/maga/magazin44.htm
いずれも、『環境と正義』(日本環境法律家連盟の月刊機関紙)に掲載したものへの
加筆版です。最新の状況を反映して書き直しましたので、ご覧ください。
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