2000.10.23 ジャビルカ通信 第128号

2000.10.23 ジャビルカ通信 第128号

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 ┃ ジャビルカ工事による労働被曝量、予想うわまわる高さ ┃
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帰国報告、続きです。

今回、ダーウィンの環境団体の事務所(北部準州環境センター、ECNT)で彼らが
入手した監督科学局(OSS)の内部資料を見せてもらっていたら、ジャビルカ鉱山
でのこれまでの労働被曝の数字がありましたので、紹介します。

なお、この資料は、OSSがARRAC(アリゲータ川地域諮問委員会、カカドゥで
のウラン採掘のモニターをする協議機関:構成メンバーは、国立公園局=連邦政府機
関、準州政府、ERA社、北部土地評議会=NLC、それに環境NGO代表としてE
CNT)に8月に提出したもので、一般には公開されていませんが、かといって秘密
資料というわけでもありません。

それによると、ジャビルカの開発工事にたずさわったERA社員および下請けがうけ
た放射線被曝量は、ガンマ線外部被曝、ラドンガス吸引による内部被曝(アルファ線
および娘核種の崩壊放射線各種)、埃の吸引による内部被曝(ガンマ+アルファ)を
合計して:

A【1999年10月~12月】

職業被曝 中央値 0.14mSv、最大 0.25mSv
非職業被曝 最大 0.17mSv

B【2000年1月~3月】

職業被曝 中央値 0.32mSv、最大 0.34mSv
非職業被曝 最大 0.01mSv以下

C【1999年1月~12月】

職業被曝 平均値 1.1mSv、最大 3.5mSv、集団被曝量 0.067pSv
非職業被曝 平均値 0.05mSv、最大 0.7mSv、集団被曝量 0.007pSv

  上のA、B、Cは細川が便宜上わりふった符号です。
  A、Bは四半期ごとの集計で、中央値(mean) が用いられています。
  Cは年間の被曝統計で、算術平均値 (average) が用いられています。

「職業被曝」は、放射線管理区域(坑道内、廃水池周辺、残土周辺など)で働く人た
ち、「非職業被曝」はそれ以外の労働者(運転手、修理工、事務員など)が埃やラド
ンガスの吸引で被曝してしまう分。
思っていたよりも高い数値で、ちょっと驚きました。
平均値/最大値が高いわりに集団被曝量が小さいのは、準備工事の段階では、被曝人
数がきわめて少なくてすむからです。これが本格的な採掘作業となれば、集団被曝量
はかなり高くなってしまいます。

参考までに、レンジャー鉱山での労働被曝は、ERA社の年次報告書によると:

98年実績 職業被曝最大値10.9mSv、非職業被曝最大値1.4mSv、集団被曝量 2.04pSv
99年実績 職業被曝最大値  7.6mSv、非職業被曝最大値1.3mSv、集団被曝量 1.07pSv

(上記集団被曝量は職業被曝と非職業被曝の合計)
ジャビルカ工事の労働被曝が予定(いわゆる計画被曝)をうわまわった要因としては、
世界遺産委員会(99年7月パリ会議)直前の突貫工事のせいと、
ジャビルカのウラン鉱石の純度が予想よりも高かったせいもあるでしょう。

ERA社による環境アセスメント書によれば、ジャビルカ第2鉱床の平均ウラン純度
は(三酸化八ウランの重量比で)0.74%とされていましたが、坑道を掘って実測して
みたら 1.15% もあったというのですから。
(後者の数字はOSS資料による。実測値なので平均値よりはかなり高い。ERA社
は鉱床全体の平均値=推定値を0.51%として、アセスメント書よりも低く見直してい
る。)

一方、ジャビルカのウラン埋蔵量は、ERA社が最近になって公表した数字(オース
トラリア証券取引所むけ8月30日発表)によると、やや下方修正されて、当初およそ
9万トンとされていたのが、推定71,000トン(イエローケーキ換算)となっています
。この下方修正は、採掘した場合の収益減少に直結するものですから、ジャビルカ開
発の見直しにあたっては重大な因子となりましょう。
ですます調で書くと、なんとなく田中さんみたいですな。
over
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ジャビルカ基金 事務局
   <itachimaru@nifty.ne.jp>
  840-8502 佐賀大学 農学部3号館 細川研究室気付
  FAX  0952-28-8738 
(郵便振替)01700-1-19686「ジャビルカ基金」
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「ジャビルカ通信」バックナンバー閲覧: http://nnafj.kmis.co.jp/japanese/ind
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オーストラリア自然保護基金: http://www.acfonline.org.au
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2000.10.20 ジャビルカ通信 第127号

2000.10.20 ジャビルカ通信 第127号

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 ┃ ERA、リオティントの傘下に        ┃
 ┃ ジャビルカの権益はコジェマに売却か?    ┃
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 3ヶ月近くもごぶさたしてしまいました。8月上旬タイ、8月中旬~9月下旬オー
ストラリアと実地調査旅行(フィールドワーク)に明け暮れました。お伝えすべきこ
と山ほどありますが、帰国後の雑務処理その他どたばたに流されるまま、はや神無月
も下旬。

 オーストラリアでは、(本業である民族学調査にだぶらせる形で)ジャビルカ、ガ
ンロム(通信123号参照)、コロネーションヒル、そして、ビバリー鉱山(通信84号
参照)に接するガモン山塊国立公園とネパバナ・アボリジニー共同体(北フリンダー
ズ山地)をおとずれました。また、ダーウィン、アデレード、パース、フリーマント
ルの反核・反原発グループとも交流してきました。

 タイでは、(今回は別の地域の調査旅行だったのですが)、バンコクでAEPSの
スタッフと会って、コバルト60被曝事故のその後の状況、オンカラック実験炉建設
計画の状況など、きいてきました。タイの件については、別のメーリング・リストで
流しますので、本通信では省略します。
★さて、ジャビルカをめぐっての7月以降の情勢をかんたんにまとめると:

(1)ERA社(ジャビルカの開発を直接担当する鉱山会社、関電・九電・四電がウ
ランを購入)の親会社であるノース社ですが、結局、リオ・ティント社(通信125号
参照)に株式の92%を譲渡し、半年におよぶ経営権争奪戦は終了。(日本の鉄鋼業界
が応援していたアングロ・アメリカン社—通信126号参照—は敗退。)
したがって、ERA社の経営権もリオが継承。ノース社のこれまでの取締役会は8月
末に総辞職し、リオ系の新しい取締役会が発足しました。

※リオ・ティントは、ご存知の方が多いと思いますが、世界最大級の鉱山開発多国籍
企業で、RTZ(旧名、リオティントジンク)、CRA(コンソーシアム・リオティ
ントジンク・オーストラリア)などの名でも知られています。本社ロンドン。もとも
とは南アフリカ系の会社ですかね? 世界各地で人権抑圧・少数民族迫害・環境破壊
の問題をおこしまくっている悪名高い企業体で、PARTIZAN (Peoples Against Rio Ti
nto Zinc でしたっけ)という国際NGOがあるくらいです。オーストラリアではこ
れまで西オーストラリア州内陸のカラミリ地区(ルドールリバー国立公園)でのウラ
ン開発をすすめ、地元の先住民族(マロ・アボリジニー、=マドゥジャラ)と敵対し
ています。マロ (Mardu) の人々はPARTIZAN とも連携しています。
(2)リオ社は、旧ノース社の不採算部門を整理するための経営見直しを現在おこな
っているところで、ERA社(つまりレンジャーおよびジャビルカのウラン権益)は
売却するか、あるいは開発凍結のままリオ社が保持するか、微妙なところです。売却
する場合、買い手は、最有力がコジェマ(通信121号参照)、ついでカナダのカメコ
社(準国営のウラン開発企業)とウランの国際流通をあつかう多国籍企業モーガン社
あたりではないか、というのが、オーストラリアの市場アナリストのおおむね一致し
た見方です。
(細川のシロウト読みでは、WMC社—東京電力にウランを売っている会社—に売
却される可能性もあるように思われます。少なくとも、交渉相手にはなっているでし
ょう。)

※リオに経営権が委譲される以前の段階で、ノース社から関電に対しても打診があっ
たようですが、さすがに関電はこの話には乗らなかったらしい。
(3)カメコ社については、カカドゥの東に位置する西アーネムランド地区で、日本
の旧動燃とともにウラン探査をおこなってきましたが、今回、確認したところ、旧動
燃はこの地区での探査権をすべてカメコ社に売却し、撤退していました。逆にいえば
、カメコ社はひきつづきウラン探査に意欲的(?)なわけで、ジャビルカ鉱床の権利
を継承することも十分考えられます。
(4)操業中のレンジャー・ウラン鉱山は資源の枯渇が近くなってきましたので、閉
山後をどうするか、具体的な選択肢が検討されつつありますが、もっとも真っ当な選
択肢である「鉱区の廃止」→「カカドゥ国立公園への編入」(つまり「飛び地」の解
消)を困難にする要因がでてきました。鉱区内に予想以上に多くのホットスポット(
放射能汚染が局地的に著しい地点)があることが、分かってきたのです。このままで
は、国立公園/世界遺産地区への返還は難しい。 <この項、監督科学局の非公開内
部資料による。>
(5)ジャビルカとレンジャーの南に位置するクンガラ・ウラン鉱床については、コ
ジェマが採掘権を握っていますが、土地権者であるジョック・グンジェイッミ氏族(
ジャッキー・カトナのお母さんの氏族です)がはっきりと拒否の意志を通告したため
、今後すくなくとも5年間は開発凍結です。これをうけて、コジェマ社は、ダーウィ
ンにある事務所を閉鎖しました。(だから、ジャビルカにももう興味を示さないだろ
う、とする見方もありますが、これは甘い。もし、コジェマがERA社を継承したら
、クンガラといっしょに5年間凍結させておいて、また逆襲してくることは、まず間
違いない。)
(6)通信123号でお知らせしたガンロム地区(南アリゲータ川上流)のウラン鉱滓
流出現場にも足を運びました。いや、おっそろしい。「ここに立ち入ったら命は保証
せんぞ」という文面の真新しい看板が(人目にふれないように!)立ってました。「
ノーニュークス・アジア・フォーラム通信」の最新号にその写真を載せてもらってい
ますので、とくと御覧あれ。国立公園局できいたところ、後始末をどうするかは、ま
だ決まっていないそうです。アスファルトで鉱滓の山を塗り固めて流出を止めるか、
あるいは、掘り起こして移動させるか(どこへ?!)、専門家の意見がまとまらない
とのこと。
(7)通信120号/125号で速報したレンジャー鉱山の汚水漏れ事故については、その
原因が、直接は雨季の異常降水ですが、漏れ出したパイプの継ぎ目のボルトのサイズ
が違っていた(つまり、漏れるべくして漏れた)ということが非公開の資料(ERA
社がカカドゥ公園運営委員会に提出した報告書)に記されています。

※ミラルの人たちは、この事故に対しては本当に怒っていて、また自分たちの暮らす
マジェラ川に汚染が及んだことを知って、たいへんな不安にかられています。ミラル
たちの住むマジンバリ(レンジャー鉱山の下流に位置する村、ジャビルカのすぐ上流
地点)にERA社から説明に来た人は、なんと「ドラム缶いっぱいの水に塩がひとつ
まみ落ちた程度だから、心配ありませ~ん」と言ったんだそうな!(複数のミラルに
よる証言) 
映画『ジャビルカ』でアボリジニーたちが憤っていた例の「シチューに唾」とまった
く同じ誤魔化しの言い訳をいまもって繰り返しているとは、さすがのあたしも絶句。
これは細川の帰国後ですが、ERA社の株主総会が先週ひらかれ、そこでは、ジャビ
ルカ開発の将来展望がはっきりとは示されなかったほか、来年度の収支見通しについ
ても、厳しい数字(収益のいちじるしい減額)が示されました。

ロイターが配信したニュースを参照:
http://www.planetark.org/dailynewsstory.cfm?newsid=8618

 

11月にケアンズで開催される世界遺産委員会の年次会議にむけてのアボリジニー側
および環境団体側の動きについては、号をあらためてお伝えします。

(※ケアンズ会議には細川も参加します。NGOによる平行会議も開催する準備が進
んでいるようです。行ってみたいと思われる方、ご連絡ください。日程は、11月2
3日から12月2日です。ただし、細川は、西オーストラリア州での調査地からまわ
る都合で、12月26日からの参加です。ケアンズ往復は日本から格安チケットで8
~9万円くらいか。

★★★会議に積極的に参加できる語学力・経験をお持ちの方に対しては、ジャビルカ
基金から旅費・滞在費の部分援助を検討いたします。ご相談ください。★★★
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ジャビルカ基金 事務局
   <itachimaru@nifty.ne.jp>
  840-8502 佐賀大学 農学部3号館 細川研究室気付
  FAX  0952-28-8738 
(郵便振替)01700-1-19686「ジャビルカ基金」
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