2000.11.30 ジャビルカ通信 第134号

2000.11.30 ジャビルカ通信 第134号

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 ┃ ジャビルカ鉱山の操業計画に安全宣言    ┃
 ┃                      ┃
 ┃ 文化遺産保全計画をめぐる交渉では     ┃
 ┃ オーストラリア政府とアボリジニーが決裂  ┃
 ┃ 世界遺産委員会は失望を表明、今後の交渉に ┃
 ┃ 国際社会の介入の必要性を明記       ┃
 ┃                      ┃
 ┃ IUCNは、地元民への健康被害の可能性は ┃
 ┃ 否定できない、と声明           ┃
 ┃                      ┃
 ┃ 環境団体は、オーストラリアが国際条約の  ┃
 ┃ 意義を理解していないと批難。       ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
世界遺産会議、第3日(29日)の様子をお伝えします。

カカドゥ問題については、9:45am-11:20am, 12:05-12:15, 1:15pm-1:30pm 合計してちょうど120分におよぶ議論がなされました。途中で、議長国であるオーストラリアが「この問題にだけあまり時間をかけるわけにいかない」と何度も討議打ち切りを示唆しましたが、発言を求める国がやまず。それでも、傍聴している者としては、十分議論されたとの印象は持ち得ませんでした。

結論から先に書きますと、

(A)自然生態系への悪影響については、現在示されている鉱山設計と操業方法を守るかぎり、ほとんど無視しうる影響しか生じない、とする科学者報告を委員会は了承。
(★細川註:現実には、レンジャー鉱山のように、設計と操業法がなし崩しに変更されることは間違いないので、あまり意味のない評価です。)
(B)今後生じる変更にあたっては厳密な事前評価が必要で、それについては独立した評価委員会を設立してモニターする。
(つまり、オーストラリア政府の安全宣言をそのまま承認はしない、ということで、これは評価できます。)
(C)文化面での問題については、先住民族ミラルとオーストラリア政府のあいだの交渉が決裂(28日夜)したことを委員会として確認し、失望を表明。
(D)両者にあらためて交渉再開をうながすものの、もし難航状態が続くようであれば、国際社会からの仲介を受け入れるようオーストラリア政府に勧告。

 以上4点にまとめたのは、細川の勝手な要約で、委員会の決議文は、自然環境領域(AとB)で12段落、文化領域(CとD)で8段落に及んでいます。釈然としないのは、この決議文のテキストがオブザーバーには配付されない(NGOだけではなく、非委員国の政府にも配付されていない)こと。AB部分については、なんとか某国政府筋から入手しましたが、CDについては、どうしてもくれない。ユネスコ職員と押し問答になりましたが、らちあかず。(ロビーイングの実力のあるACFとTWSも、それにグンジェイッミも入手できていない!) もちろん、会議では妥結した文面が読み上げられましたので、ノートをとって、NGOどうしで照合して、だいたい正確なところは把握できていますが、事務局が委員国用に印刷したテキストを渡してくれないということは、最終日の議事録への記載までにまだ表現の修正がおこなわれるということなのかな。

インターネットで読める報道としては、

http://www.abc.net.au/news/newslink/nat/newsnat-29nov2000-65.htm
http://www.abc.net.au/news/state/nt/metnt-29nov2000-7.htm
http://www.abc.net.au/news/state/nt/metnt-29nov2000-10.htm
http://www.theage.com.au/news/2000/11/30/FFXYC3UU3GC.html

などを御覧下さい。
———————————————-
以下、各国代表の発言を順番に要約します。

9時45分 カカドゥ国立公園の議題にはいることをピーター・キング議長(オーストラリア)が宣言。

(昨日、予告された合意文書の英語版と仏語版が委員国に配付される。オブザーバーには配付されず。)

オーストラリア(英語)「連邦環境省のロバート・ヒル大臣が、世界遺産保全のためにオーストラリア政府が1800万豪ドルの特別支出をすることを今朝、発表した。世界遺産保全にかけるわが国政府の意気込みを感じとっていただきたい。」
(以下、オーストラリア政府代表の発言者はすべてロジャー・ビール環境省次官)

ブライアン・ウィルキンスン博士(英国、ISPの主席、英語)「世界遺産委員会の要請をうけて国際科学パネル(ISP)がおこなった評価を報告する。(★細川註:この報告内容は文書で入手できています。ユネスコのwebsiteで検索する場合の公文書番号は WHC-2000/CONF.204/INF.20) ISPは、現在、オーストラリア政府の環境アセスの対象とした鉱山設計と操業方式についてのみ、評価をおこなった。(★細川註:つまり、ジャビルカ現地に製錬設備と鉱滓ダムを新規に建設する案、通称JMA = Jabiluka Mill Alternative) 評価の結論としては、JMAによって自然環境におよぼされる悪影響はほとんど無視できるほど小さいということだ。ただし、ERA社が、環境アセスで提示したのと異なる廃水処理方式をとろうとしていることは承知しているが、今後そのような変更がなされるのであれば、あらためてアセスを全面的にやりなおす必要がある。また、ジャビルカ鉱山の操業が終了したあとの50~60年にわたる長期的な影響についても、本報告とは別に評価する必要がある。また、鉱山操業にあたっては、通例、予測されない事態がしばしば発生す
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(以上、約15分の報告。報告書はA4判52ページ英語)

IUCN(国際自然保護連合、ユネスコ助言機関、英語)「IUCNはISPの報告を承認したが、それとは別個にIUCNとしての見解を文書で提出する。(細川註:10段落にわたる1頁の英語文書、入手済み) カカドゥ問題から私たちが学ぶべきことは非常に多い。世界遺産の保全を考える上では、実際に生じている悪影響もさることながら、潜在的な脅威(将来発生するかもしれない悪影響)にもっと注意をむけなければならない。自然生態系への悪影響がないというISPを結論をIUCNは承認するが、これは将来、周辺住民への健康問題が発生しないことが確認されたということを意味しない。また、ERA社の親会社が最近変わったが、新しく親会社となったリオ社は、これまでカカドゥ地区でおこなわれてきた環境保全のための措置をいささかも低質化させてはならない。」

ユネスコ事務局(世界遺産センターのバンダラン事務局長、英語)「今朝、ロジャー・ビール氏(オーストラリア政府代表)からの書簡を受け取った。オーストラリア連邦政府と北部準州政府のあいだに、カカドゥ地区での環境モニタリングにおける連邦政府の権限を強化するむねの合意が成立した、との内容だ。」

アーサー・ジョンストン博士(オーストラリア連邦政府の任命した「監督科学官」= Supervising Scientist、カカドゥ地区のウラン鉱山周辺の環境モニタリングの責任者)「ジャビルカ鉱山の最終的なデザインはまだ確定していない。追加アセスが必要なことは認める。ISPの求める独立科学諮問委員会は、オーストラリア科学院 Academy of Science が任命するオーストラリア人の科学者をあてるべきだ。ISPの求める「包括的な生態系評価・景観影響評価」は、はたして必要性があるのか、疑問だ。鉱山操業にともなって予測される悪影響は具体的・数量的にすべて評価されつくしており、その結果、安全な操業が可能だという結論はゆるがない。先般のレンジャー鉱山の廃水漏えいはカカドゥ国立公園の環境になんら悪影響を及ぼしていない。」
(★細川註:すさまじい発言でしょ。科学と政治が癒着すると、こういう物言いになるという典型です。レンジャーの鉱滓汚水もれ事故については、通信120号を参照)

カナダ(英語)「長期的なモニタリングの体制をただちに発足させるべきだ。データが整わないうちに鉱山の操業を開始すべきでない。」

ベルギー(仏語)「ISPとオーストラリア政府の合意文書を支持する。リオ社は従来の環境保全の手続きを遵守すべきだ。」

オーストラリア(英語)「リオ社にはオーストラリア政府からそのように要請する。しかし、環境モニタリングには予算の制約がともなうことも理解してほしい。」

フィンランド(英語)「独立科学諮問委員会の構成が、オーストラリア人科学者に限られるのであれば、はたして独立性は保証されうるのか?」

オーストラリア(英語)「アカデミーのような権威ある組織に人選をゆだねれば、独立性は担保される。」

マルタ(英語)「オーストラリア政府のこの間の協力的な姿勢と資金提供に感銘をうけている。」

議長(英語)「それでは、配付した合意文書を委員会の決定として採択したい。」

ベニン(仏語)「文言がおかしい。結論部分の書き方をなおすべきだ。」

オーストラリア(英語)「ISPの求める「包括的な生態系評価・景観影響評価」は、資金的にも方法論的にも非常に困難だ。」(★細川註:あれ、オーストラリア政府は合意したんじゃなかったの??)

カナダ(英語)「影響評価をいつまでにおこなうか、明記すべきだ。」

ウィルキンスン博士(英語)「合理的に可能なかぎり速やかに(as soon as reasonably possible)、との文言を挿入することでどうか?」

南アフリカ(英語)「住民への健康リスクは、はたしてどうなのか?」

ジョンストン博士(英語)「すべてのリスクは具体的・数量的に把握されたと申し上げたはずだ。」

議長(英語)「では、合意文書を採択してよろしいですね。」

ベルギー(仏語)「合理的に可能なかぎり、などと書くと、かえって曖昧で、勧告の効力が弱まってしまう。そのような文言を挿入すべきでない。」

カナダ(英語)「え、どうしてですか。そんなことありませんよ。」

モロッコ(仏語)「もうこんな膠着した議論を続けているべきではない。早くきりあげようではないか。」

ベルギー(仏語)「合理的に可能なかぎり、という慣用句はしばしば対応を遅らせる効果を生むものなのだ。」

モロッコ(仏語)「そういった細かいことは、国際条約文書の作成に慣れている専門家にゆだねるべきではないか。」(★細川註:ユネスコ事務局にあずける、という意味)

議長(英語)「いまウィルキンスン博士から、さきほどの文言(合理的に …)を撤回したいとの意志表示があった。さきほどのベニン代表の示唆した修正のみを加えて、委員会決議として採択したい。」

10時40分、議長の3度目の催促で、ようやく合意文書が採択される。

議長(英語)「次に、文化保全措置の領域を討議したい。ユネスコ事務局から、ビューロー会議での合意文書を説明してもらう。」

バンダラン世界遺産センター事務局長(英語)「ビューロー会議の合意文書では、オーストラリア政府と伝統的土地権利者(★細川註:ミラル・アボリジニーのこと)との交渉が進んでいることを歓迎する、となっていたが、残念ながらこの交渉は昨夜、決裂した。これをうけて、土地権利者であるイボンヌ・マルガルラ氏からユネスコあてに昨日づけで書簡が届いた。その内容は、連邦政府との交渉は決裂した、事態を打開するため、ミラル氏族は世界遺産委員会の助言を求める、本会議での3分間の発言を求める、というものだ。」
(★細川註:この書簡の写しは、29日朝、総ての委員国と多くのオブザーバーに配付された。細川も入手済み。おって翻訳の予定。)

フィンランド(英語)「交渉が決裂したということならば、事態はまったく変わったということだ。ビューローの合意文書は意味を失った。」

ICOMOS(ユネスコ助言機関、英語)「私たちは時限爆弾をかかえているようなものだ。カカドゥ国立公園は、当初は岩絵の価値にもとづいて世界文化遺産に認定されたが、その後、「存続する文化」(living culture) という基準にも該当することが追加認定された。政府とアボリジニーの交渉は、完全に決裂したが、これは今回が初めてのことではない。「存続する文化」の保全計画の策定は、生きている当の人々の協力があってはじめて可能なのだ。オーストラリア政府がそのことを理解できず、当事者能力を欠いた対応をくり返してきた以上、国際社会からの介入が必要だ。つまり、さきほど合意をみた自然環境への影響評価と同じ方式をとるべきではないか?」 (★細川註:ISPと同じような国際チームを派遣して調査をおこなう、という意味)

タイ(英語)「ミラルの人たちの数はあまり多くないときいている。そうであれば、これはあくまで国内問題なのではないか。世界遺産委員会は内政干渉してはいけない。」
(★細川註:昨日来、アドゥーン博士の発言はどうもピントはずれで、期待外れです。)

ハンガリー(英語)「先住民族の文化の価値は、世界が共有すべき普遍的価値なのだ。世界遺産委員会は、オーストラリア政府とアボリジニー土地権利者の対話を仲介(facilitate) するべく積極的にはたらきかけるべきだ。」

オーストラリア(英語)「たしかに交渉は決裂したが、オーストラリア政府の立場は、ビューローの合意文書の線にそったものだ。すなわち、文化保全策を策定するための新しい枠組みを協議する、という試みを放棄してはいない。アボリジニーおよびその他の国内当事者の協力をえて、いつでも交渉を再開する準備がある。交渉の決裂は、誤解にもとづくものだ。」
(★細川註:「その他の国内当事者」とは、鉱山会社、北部土地評議会、そして、両者の合意をえて任命される仲介者を意味する。実は、この「仲介者」が曲者で、すこしややこしい事情があるので、別の号であらためて解説します。)

ひき続きオーストラリア「北部準州政府は、監督科学官(SS)の権限強化に同意した。リオ社は、従来とおりの厳格な環境モニタリングを継続することを約束する声明を今朝、発表した。京都会議とパリ会議で世界遺産委員会からオーストラリア政府に要請された諸事項は、「文化保全策の作成」以外はすべて達成された。残る「文化保全策の作成」は、リオ社の参加をえておこないたい。ジャビルカ鉱山の操業は、当面はじまらないのだから、十分な時間的余裕がある。交渉に際しては双方に善意(good will、交渉を成功させるために協力する意志、という意味)があることを世界遺産委員会はぜひ認めてほしい。アボリジニーとの国内協議を注意深くおこなっていくので、静観していただきたい。」

南アフリカ(英語)「しかし、現実には対話はたびたび暗礁に乗り上げている。そのような場合には、外部からの仲介が必要なのではないか。カカドゥ国立公園はオーストラリア人だけのものではない。私たちは世界遺産の保全のために話し合っているのだ。さきほどのICOMOSの提案を南アフリカは支持する。オーストラリア政府は、第三者による仲介の必要性を真剣に検討すべきだ。第三者は、政府が任命するのではなく、また、先住民族が指名するものでもない。」

フィンランド(英語)「南アフリカの発言を強く支持する。ICOMOSの提案は理にかなっている。」

カナダ(英語)「対話が決裂したという知らせは、とても残念だ。私たちはもう何年もカカドゥの問題を話し合ってきた。当事者交渉の決裂について委員会が失望していることを、決議文書に明記しなければならない。また、オーストラリア政府とアボリジニーの双方に対して、対話の再開を強くうながしたい。」

ハンガリー(英語)「さきほど、ミラルの人から発言の要請があった筈だが、どうなったのか。委員会として決定を下す前に、ミラルの発言をうけたい。」

パプアニューギニア(英語)「世界遺産委員会でわが国政府が発言するのは初めてです。オーストラリア政府がいろいろな努力を払っておられることには敬意を表します。いまここで最も留意すべきことは、「生きた文科」の問題であるということです。カカドゥのような問題は、ひろく大平洋地域のあちこちで見られます。古典的ケースというべきでしょう。すべての原因は鉱山開発にあることは明らかです。カカドゥ国立公園を世界遺産に認定した際に、すでに鉱山の存在は委員会に知れていた筈です。問題がおこることは最初から分かっていたというべきではありませんか。大平洋地域でこのような問題がくり返されることを、わが国政府は大いに憂慮しています。」
(★細川註:パプアニューギニアの主席代表は、国立博物館の館長さんです。)

南アフリカ(英語)「対話は永遠に続けているというわけにはいかない。一定の期限を設定して交渉の成果を出すような枠組みが必要だ。」

議長(英語)「ミラル代表者のイボンヌさんは、公式オブザーバー資格をえていますから、委員の皆さんから異議がなければ発言をすることを議長として許可することができます。いかがですか?」

(異議なし)

11時15分から1分間。イボンヌ・マルガルラの発言。
「今日は英語で話します。ちょっと、あがってます。うまく話せるかしら。
ジャビルカには djang(ジェン)があります。たいへん危険です。
政府は私たちの言うことを信じてくれません。
政府は私たちが嘘を言っていると言うのです。
ジャビルカに djang などないというのです。
聖地はとても強いのです。
私たちはあそこに djang があると信じています。
政府は私たちを助けてくれません。
私たちには皆さんの助けが必要です。」

(★細川註: djang は神話の精霊が宿る場所のこと。「聖地」)

ICOMOS(英語)「やはり外部組織が交渉に関与すべきだ。ICOMOSとしては、仲介の準備をする意向がある。」

ICCROM(ユネスコのもうひとつの助言機関、仏語)「委員会の決定の文言は明確でないといけない。外部からどのような関与をするのか、具体的に示す必要がある。」

オーストラリア(英語)「ミラル側は、ロバート・ヒル環境大臣がミラルの対応を批難したとしているが、「ミラルが事実を述べていない」とする発言を大臣がした事実はない。」
(★細川註: 前夜の交渉は環境大臣とグンジェイッミ法人のあいだでおこなわれた。交渉の席上、環境大臣は聖地の具体的所在をミラルが明かさないことに業を煮やして、聖地の存在そのものに疑問を呈する発言をおこなった。)

議長「15分間の休憩に入りますが、この案件はまだ結論がでていません。したがって、会議場の外の人たち(★細川註:マスコミのこと)に議事の内容について話すことを禁止します。」

11時20分から、結局45分間の休憩となった。イボンヌさんは、ようやくホッとしたような表情に。休憩のあいだに、カナダを中心に、委員会決定の文案が作成される。

12時5分再開
議長(英語)「カナダ政府の努力によって、これまでの議論をふまえた委員会決議の草案がまとまりました。読み上げます。」

草案(8項目)の骨子:
1)ウラン鉱山開発によって彼らの文化・社会が脅かされるかもしれないとの懸念を先住民族がいだいていることに留意する。
2)文化地図の作成と文化遺産保全計画の策定が、現時点では不可能であることを認識する。
3)上記の策定作業に助力する意志をICOMOSが表明していることに留意する。
4)オーストラリア政府が、策定にむけた新たな過程にはいる用意があることを確認する。
5)現時点で政府と先住民族のあいだの対話が中断していることに留意する。
6)対話の継続が重要であることを再確認する。
7)政府と先住民族が対話再開にむけて努力するよう促す。
8)対話の中断が続く場合は、委員会はオーストラリア政府および先住民族の双方に対して、調停者の介在する対話にはいることを検討するよう要請する。そのような対話は第25回世界遺産委員会(2001年11月)の前に始まっていることが望ましい。

議長(英語)「この問題ばかりにあまり時間をとっている訳にはいきません。いまの草案に対して委員国の合意を求めます。」

モロッコ(仏語)「8がよく分からない。もう一度、読んでいただきたい。」

議長(英語)「すみません、読み方が早すぎました。」(再度、読み上げ)

コロンビア(英語)「カカドゥについて科学と文化を別々に議論してきたが、複合遺産としての統合性(integrity) がちゃんと評価できていないのではないか。」

ベルギー(仏語)「書かれたテキストを配付しないで、読み上げだけで決定を下すことはできない。国際会議の慣習に反している。」

モロッコ(仏語)「ベルギーに同意する。正確さを欠いたやり方だ。」

南アフリカ(英語)「イボンヌさんが発言したことが全く反映されていない。委員会として彼女の発言にきちんと留意すべきだ。」

議長(英語)「それは議事録に記載する。テキストについては、フランス語への翻訳も含めて、今から書記局が準備するので、それが届いた時点であらためて審議したい。」(12時15分)

(ということで、いったんカカドゥの話はきりあげ、次の議題にはいる。次の議題は、地域ごとの遺産保全の計画について、ということで、今回は東アジア・東南アジア地区の計画が審議される。そのなかで、日本政府代表団からの説明があり、要するに資金提供をいたしますよ、ということ。しかし、その発言(英語)の冒頭「これまでの議長の采配がたいへんお見事であることを賞賛します」などと言うので、のけぞってしまった。いったい何を聞いておったのだ、文化庁のお兄ちゃん!)
13時15分、テキストの英語版/仏語版が委員国にのみ配付される。
議長(英語)「委員のコメントを求めます。」

ベルギー(仏語)「第8項のフランス語の表現が分かりにくい。」

議長(英語)「たしかに、そこは翻訳の人が苦慮してました。」

ベニン(仏語)「第7項のフランス語の動詞と時制をあらためる必要がある。」

モロッコ(仏語)「第8項で、仲介役を誰が提供するのか明らかでない。」

南アフリカ(英語)「第1項で、脅かされるかもしれない(threat still might exist) とあるが、伝統的土地権利者の発言は、危機の存在を明確に述べたのだから、かもしれない(might) は削除すべきだ。」

議長(英語)「そこの表現は、ビューロー会議での合意の文面を用いたまでだ。」

ハンガリー(英語)「南アフリカを支持する。さらに、委員会はミラル代表の協力に感謝する、というような文言があってしかるべきだ。」

オーストラリア(英語)「第8項の文言はベルギーの意見をいれて直したい。」

ギリシャ(仏語)「 …」(第2項のフランス語の文言について注文/聞き取れず)

書記局(仏語/英語)「(ギリシャ代表の指摘に応じたうえで)(第1項の) might は削除します。」

議長(英語)「では、そのような修正を加えた上で委員会決議として採択します。ミラル代表のご協力に感謝します。」

13時30分、カカドゥ国立公園の議題、終了。
やれやれ疲れた。

NGOはロビーに出て評価会合。みな浮かぬ顔をしている。もっと悪い結果がでる可能性があったのだから、委員会決議には評価できる部分もある。だが、テキストが配られないなど、不透明さがつきまとい、最終日(土曜日夕方)の議事録採択の際に、もうひと悶着ありそうな気配もある。ともあれ、2時から記者会見をひらくので、意見交換と調整をおこなう。ミラルは、みな厳しい表情で鳩首会談。

決議の評価については、号をあらためて分析したいと思います。
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ジャビルカ基金 事務局
   <itachimaru@nifty.ne.jp>
  840-8502 佐賀大学 農学部3号館 細川研究室気付
  FAX  0952-28-8738 
(郵便振替)01700-1-19686「ジャビルカ基金」
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ストップ・ジャビルカ・キャンペーン・ジャパン
  ホームページ: http://SaveKakadu.org

「ジャビルカ通信」バックナンバー閲覧: 
http://nnafj.kmis.co.jp/japanese/index.shtm#BULL
      (→「国外情報」をクリック)

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ミラル氏族のホームページ: http://www.mirrar.net
オーストラリア自然保護基金: http://www.acfonline.org.au
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2000.11.30 ジャビルカ通信 第135号

2000.11.30 ジャビルカ通信 第135号
参加国情報の補遺: 次の国もオブザーバー参加(非委員国)していることを確認しました。
 
   タンザニア、アゼルバイジャン、パプアニューギニア

まだ、他にも未確認の国があると思われます。参加国数は、ざっと60ヶ国くらいでしょうか。
まだ顔をあわせていない(発言もない)けれど、たぶん来ていると思われる国は以下の通り:

   ベネズエラ、ニカラグア、セネガル、ベラルーシ、ボスニアヘルツェゴビナ、
   スイス、クロアチア、アルメニア、ウズベキスタン
通信132号で、米国連邦議会の資源委員会がオブザーバー参加していると書きました。正確には、連邦議会の下院(House of Reps) の資源委員会 (Committee on Resources) です。

これまで、ジャビルカ鉱山計画のカカドゥ国立公園への影響(水質汚染・生態系への影響)を評価してきた「ISP」を「独立科学者パネル」と訳していましたが、正しくは「国際科学パネル」(International Science Panel) でした。ごめんなさい。お詫びして訂正します。もちろん、「独立」(Independent) というのもISPが設立された大きな理由なのですが。
通信133号で、オーストラリア南東部、ブルーマウンテンの登録はたぶん無いのではないか、と見通しを述べましたが、はずれ。29日の夕方、最後の議題で、30分におよぶ議論のすえ、自然遺産リストへの登録が決定しました。IUCNの勧告では、「国内的には保全上の価値は高いが、世界的にみればユニークではない」という否定的な評価だったのですが、現在、世界各地にユーカリが人為的に普及し、かつ各地でさまざまな害を及ぼしているという現状をふまえ、ユーカリの原産国の原生林には調査研究上の価値が高い(非原産地域で発生している環境問題への対策に貢献するデータが得られる期待がもてる、という意味で)として、世界遺産への登録がきまりました。

 

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2000.11.29 ジャビルカ通信 第133号

2000.11.29 ジャビルカ通信 第133号

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 ┃ 危機遺産リストと締約国の「拒否権」を    ┃
 ┃ めぐって、意見対立             ┃
 ┃                       ┃
 ┃ カカドゥ問題をめぐって、オーストラリア政府と┃
 ┃ IUCNが歩み寄った(秘密会)と書記報告  ┃
 ┃ 詳細は、29日に文書配付される模様     ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

世界遺産会議、第2日(28日)の様子をお伝えします。

(会議は毎日9am-7pmくらい、ロビーイングはいつも夜まで及び、またNGO寄り合いが830amからあるので、この通信は、翌日の朝、6am-730amくらいに書いています。あたふたと書いてますので、文章がこなれていない点はお許しください。)

(マック以外の機種で受信される方は、フランス語のアクセント記号が文字化けすると思いますが、お許しください。)
ジャビルカ/カカドゥ国立公園の件は、秘密会での折衝(オーストラリア政府、国際自然保護連合IUCN、独立科学者パネルISP)が初日から平行しておこなわれています。カカドゥ国立公園の評価は、当初の議案書では28日の午後に審議される予定でしたが、書記局から「(秘密会での)折衝が数時間前にいちおう妥結して、合意文書が英語で作成された。公用語のフランス語に翻訳する時間が必要なので、あす(29日)の朝に文書配付して審議する」と、いささか唐突な発表がありました。

その文書の内容は、まだわかりません。ACFとTWSの人たちが盛んに走り回ったり携帯をかけまくって、探りをいれてますが、いつもと違ってIUCNの口が固く、またミラル側(グンジェイッミ先住民族法人)にも知らされていません。アレックはかなり苛ついています。ロジャー・ビール(オーストラリア政府)は例によってポーカーフェース。議長さん(オーストラリア政府のピーター・キング)は、なんとなく浮き浮きした様子です。

いっぽう、グンジェイッミ先住民族法人も、オーストラリア政府(環境省)とIUCNとそれぞれ別個に折衝を重ねています。ジャッキーは、ほぼグロッキー状態。トラッカーによれば、「 agree to disagree の状態だ」そうです。この内容については、ざっと聞いていますが、まだ書いちゃダメ、と言われているので、後日あらためて。

というわけで、カカドゥ/ジャビルカの件は、表舞台ではまだ議論されてないのですが、その前哨戦となる重要な議論(そして、かなり鋭い意見の対立)がありました。

世界遺産条約の運用規則(operational guideline) の改訂問題(通信129号、130号参照)ですが、危機遺産リストの認定にあたって、当事国に拒否権があるのか否かです。これは、たしかに現行の条約および運用規則では、あいまいです。指定は委員会が決定する、と書かれていますが、第11条では当該の条約締約国(つまり問題となる自然遺産/文化遺産の所在国の政府)の同意をえて世界遺産リストあるいは危機遺産リストへの登録(inscription)がおこなわれる、とされています。

ネパールのカトマンズ渓谷(歴史的集落と景観)の保全状況をめぐる議論で、IUCNは以前から危機遺産リストへの登録を勧告してきましたが、ネパール政府がIUCNの助言(保全対策)を具体的に受け入れる意向を示していることから、危機遺産への登録を見送るべきかどうかが問題となりました。

タイ代表のアドゥーン博士が、「危機遺産リストへの登録は、制裁措置ではなく、問題となる世界遺産の保全を国際社会が緊急かつ全面的に支援するということを意味するのだ」というかねてからの主張を述べたところ、オーストラリア政府のロジャー・ビール代表が「当事国の同意なしに登録する権限は委員会には無い!」とかなり強い調子でぶちあげました。これに、ベルギー・ギリシャ・ハンガリーが強く反発。ギリシャ代表(ユネスコ大使をつとめる女性)は「当事国の同意がなくても危機遺産の指定はありうる。すべては委員会が決定し、委員会のみが決定する」と、これも強い調子で主張。
ちょうど午後のお茶の時間になっていたので、キング議長は議論をきりあげるつもりで、「ほかに発言がなければ、お茶に …」と言いかけたら、なんとほとんど全ての委員国の代表が一斉に挙手しました。議長は、やむをえず、お茶のあと議論を継続することを宣言し、発言の順番を指定しました。指定からもれた国が、国名の書いてあるプラスチックの板をふりあげて(国際会議で発言を求めるときの慣習)存在をアピールし、書記局にうながされた議長がこれらの国を発言予定リストに追加しました。このような光景は、温暖化会議などでは頻繁に見られるのでしょうが、ユネスコの会議では珍しい一幕です。

(お茶のあいだも、各国代表が議論を重ねています。こうなると、細川など全然お呼びじゃない。ひたすら耳ダンボで、お菓子をぱくつくのみです。昔とった杵柄でスペイン語がききとれるのは、こういう時、ものすごく役にたちますね。)

さて、休憩後の主な発言は次の通り:

ギリシャ(フランス語/英語)「これは深刻な問題だ。拒否権を認めてしまったら、世界遺産条約の効力がいちじるしく損なわれる。危機遺産リストはブラックリストではないのだから、政治的配慮をはさまず決めるべきだ。」

南アフリカ(英語)「これはイデオロギーの領域の問題だが、この問題に関する限り、私達はイデオロギーをたたかわさざるをえない。パンドラの箱はすでにあけられたのだ。」

ハンガリー(「遺産登録の権限は、あくまで委員会にあり、委員会のみにある。」

フィンランド(英語)「おびやかされている遺産の保全に地元が努力して成果をあげている時には、危機遺産登録は見送るべきだ。そうでないと努力を低く評価したことになってしまう。」

韓国「委員会が何らかの決定をくだすときは、事前のコンセンサスが成立していることが望ましい。」

ベニン(フランス語)「我々はこの問題をもう6年近く議論してきた。現行の条約と規則には、たしかに2通りの解釈(国の同意が必要/必ずしも必要でない)を許す文面になっている。危機遺産リストというものの存在理由にたちもどって考えなくてはならない。つまり、世界遺産の劣化(d使radation)をくいとめる、ということが目的なのだ。」

タイ(英語)「11条の4には、必要があるとみなされるときには委員会が幹事国会議の審議をまたずにいかなる時点でも即座に危機遺産登録をおこなうことができる、とある。この条文を文字とおりに解釈すべきだ。一方、当時国との協議のプロセスは大事にすべきだ。」

ベルギー(フランス語)「ネパールの件でこんな長い議論になるのは驚くべきことだ。しかし、問題となっているのは条約の根本原則にかかわることなので、よく検討することが必要だ。委員会がはたすべき役割は、世界遺産を守るためのあらゆる可能な手段をとるということに尽きる。条文解釈の問題については、ユネスコの国際法担当の専門家に諮問して、きちんとした助言を受けるべきだ。」

キューバ(フランス語)「ガラパゴス諸島の保全のときと同じ扱いにすべきだ。」(細川註:当事国政府に十分な時間を与えるということ?)

インド(英語)「…(ききとれず)」

モロッコ(フランス語)「もし、当事国政府が委員会に同意しない事態になったら、委員会としてどのような手段が残されるのか、よく考えなければならない。」(細川註:これは意味深長な発言です。カカドゥ国立公園の件がまさにそういう状況なので。)「特定の案件についての決定を下す必要がある状況でこの原則問題を議論することは、我々にとって大変なプレッシャーであり、望ましくない。条約の解釈を確定するために、個別案件の審議からはなれた特別会議をひらいて決着をはかるべきだ。」

コロンビア(フランス語)「締約国には条約の目的を遂行する責任と義務がある。」

中国(フランス語)「原則の問題と運用の問題だ。運用の問題を重視すべきだ。委員会は当事国が効果的に保全策をとれるような方向で支援しなければならない。」

ネパール(英語)「ユネスコの助言をすべて受け入れて、あらゆる可能な保全策をとるつもりだ。」(細川註:だから危機遺産認定は見送ってほしい、という含み)
議題としては、ネパールのカトマンズ渓谷をめぐって火がついた議論ですが、もちろん総てはジャビルカ問題を念頭に発言されています。

 

 ちなみに今回の会議では、あらたに危機遺産として3件(カカドゥは除く)が登録される見込みです。
通常の世界遺産リストへの新規登録は、44件(自然遺産7件、複合遺産1件、首里城など文化遺産が36件)見込まれています。オーストラリアのブルーマウンテンの自然遺産リストへの新規登録は、微妙なところ。たぶん見送られるのではないかな。
さあ、これから朝の会議です。いよいよカカドゥ国立公園の件が議論されます。今日だけでは終わらないかも知れません。行ってきます。

(イボンヌさんも、カステラ食べて、元気を出してます。)
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2000.11.29 ジャビルカ通信 第132号

2000.11.29 ジャビルカ通信 第132号
まず、お詫びと訂正:
前号でお伝えしたジャビルカ問題についての独立科学者パネル(ISP) の3本の報告の文書番号のうち、第1報告の番号がまちがってました。すみません。
————————————–
(誤)
WHC-2000/conf.205/INF.3E
WHC-2000/conf.202/INF.7
WHC-2000/conf.204/INF.20

(正しくは)
WHC-99/conf.205/INF.3E
WHC-2000/conf.202/INF.7
WHC-2000/conf.204/INF.20
————————————–

インターネットで流れているケアンズ会議関係の記事から2本:

http://www.theage.com.au/news/20001128/A41549-2000Nov27.html
(世界遺産条約の運用規則の改訂に関するオーストラリア提案とその撤回、通信130号を参照)

http://www.abc.net.au/news/indigenous/ab-28nov2000-6.htm
(短いスピーチを予定していた北部クインズランド土地評議会のアボリジニー代表が、「時間の都合で」と議長(オーストラリア)に発言を拒否されたため、会議場前で抗議した。これは写真もとってありますので、またいずれ紹介します。)

————————————–

次に、通信読者からのいくつかの質問にまとめてお答えします。

(質問1)「どこが幹事国/委員国なのか、具体的に知りたい」

 はい、幹事国(7ヶ国)は:オーストラリア、フィンランド、ギリシャ、ハンガリー、メキシコ、モロッコ、ジンバブエ、委員国(幹事国に加えて次の14ヶ国)ベルギー、カナダ、中国、韓国、タイ、ベニン、南アフリカ、キューバ、コロンビア、エクアドル、エジプト、イタリア、ポルトガル、マルタ(順不同)
以上、21ヶ国で世界遺産委員会が構成されています。
このほかに会議に参加しているのは、細川が確認した限りでは、29ヶ国(オブザーバー参加国、順不同):オーストリア、ブラジル、ブルキナファソ、フランス、ドイツ、バチカン、日本、ネパール、オランダ、ニュージーランド、ペルー、スロバキア、スペイン、スウェーデン、ウガンダ、英国、ベトナム、リトアニア、サウジアラビア、マレーシア、インド、ポーランド、アルゼンチン、米国、ロシア、イスラエル、フィリピン、モザンビーク、トルコ、フィリピン、パレスチナ

ほかにも来ている国があると思いますが、未確認。なにせ、まだ参加者リストが公開されていない(事務局が編集中)。

主に議論をリードしている(=さかんに発言している:立場はさまざま)国は、オーストラリア、フィンランド、ギリシャ、ハンガリー、モロッコ、ベルギー、ベニン、タイ、南アフリカ、イタリアなどです。
幹事国・委員国以外で積極的に発言しているのは:ドイツ、インド、ロシア、米国など。日本はこれまでのところ、いっさい発言なし。後ろのほうでおとなしくしてます。
(オブザーバーも、政府代表であれば、議長の許可をえて発言できます。NGOはできない。)

※前号で「アメリカがいない」と書きましたが、ちゃんと来てました。失礼。
(質問2)「首里城の世界遺産認定は、ケアンズ会議で決まるのか?」

 たぶん明日(30日、会議第4日)に審議され、承認される見通しです。配付されたリストには、「Sites Gusuku et biens associ市 du royaume des Ryukyu」となっています。日本関係は今回この1件のみ。
(3)「ジャビルカ問題以外では、どんな環境NGOが会議に参加しているのか?」

環境団体としては、通信129号であげた団体のほか、WWF、フリンダー島を守る会(主に湿地、渡り鳥)、エネルギー自然資源評議会(CENR)、あと地元クインズランド州の自然保護団体がいくつか。
面白いことに、米国の連邦議会の資源委員会も代表を送ってきています。
学者関係では、国際考古学者会議(WAC)、ビクトリア大学(ニュージーランド)、サザンクロス大学。
アボリジニー関係では、ワーニ伝統長老会議、イディン先住民族、バマ熱帯雨林アボリジニー協会、北部クインズランド土地評議会、グンジェイッミ先住民族法人など。
それと、エルサレムの件があるので、サイモン・ウィーゼンタール財団も来ています。
●写真を送れ(メールに添付しろ)とのリクエストがありましたが、すみません、デジカメを使ってないので、そういう芸当ができません。

さて、ジャビルカ問題はいよいよ今日(29日)議論されます。前哨戦となった昨日の議論の様子とあわせて、次号でお伝えします。
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2000.11.28 ジャビルカ通信 第131号

2000.11.28 ジャビルカ通信 第131号
世界遺産委員会ケアンズ会議の内部資料がすでにユネスコの website に載っている、とユネスコの職員さんが言ってます。細川は未確認ですが、ジャビルカ問題に関連する文書の番号(ユネスコ公文書番号、websiteで探すときもこの番号を用いる)は下記の通りですので、関心のある方は検索してみてください。
(「—」以下は細川の注記)

WHC-2000/conf.204/4 — 先週のビューロー会議の議事録
WHC-2000/conf.204/9 — 危機遺産の保全状況の個別審議資料
WHC-2000/conf.204/10 — それぞれの世界遺産の保全状況の個別審査資料
WHC-2000/conf.204/12 — 世界遺産リストおよび危機遺産リストの候補についての個別審査資料

WHC-2000/conf.204/INF.19 — 危機遺産リストの役割についての評価
WHC-2000/conf.204/INF.20 — ISPの最新の報告(2000年9月)

上記番号の「WHC-2000/conf.204」はケアンズ会議のコードです。初日の事典で用意された文書は32件で、いずれもこのコードがついています。
ちなみに、京都会議(1998)は「WHC-2000/conf.203」、パリ会議(1999)は「WHC-2000/conf.205」ですので、議事録など関連文書が読める筈です。(なぜかコード番号の順番が前後しています。)

ジャビルカ問題についての独立科学者パネル(ISP) の報告(1)(2)(3)は、それぞれ、次の番号となります。

WHC-2000/conf.205/INF.3E
WHC-2000/conf.202/INF.7
WHC-2000/conf.204/INF.20

ユネスコのホームページから(あるいは国連のホームページ)から、World Heritage Committee あるいは World Heritage Centre にリンクしています。
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ケアンズにて、細川 弘明

2000.11.28 ジャビルカ通信 第130号

2000.11.28 ジャビルカ通信 第130号

 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃ ビューロー会議の議事録、承認されず   ┃
 ┃ 委員会の改革案をめぐって、はやくも紛糾 ┃
 ┃ 世界遺産条約そのものの改訂も視野に   ┃
 ┃                     ┃
 ┃ 連邦環境大臣に「指名手配書」!     ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
 世界遺産会議の初日の様子です。ケアンズは雨模様。
 原生自然協会(TWS)のアレック・マーさん(京都会議に来日したひげもじゃ熊さん)が、日本の皆さん、とくに京都の皆さんによろしく! と顔をほころばせています。とりわけ、アイリーン・スミスさんにエールを送りたい、とのこと。「グリーン・アクションは頑張っておるか? 財政は大丈夫か?」と心配しているので、「大丈夫、大丈夫、そう簡単にはつぶれんよ」と無責任にも請け合っておきました。
 さて、ジャビルカ問題をめぐる情勢は、思いのほか厳しく、ジャッキー・カトナは顔をくもらせています。

自然環境への影響に関しては、前号でお知らせした独立科学者パネル(ISP)の報告(第3報告)が議論の鍵となります。ビューロー会議(先週)の議事録では、ISPの報告がかなり都合良く(つまり鉱山開発の容認につながる部分を中心に)「要約」されています。議事録の文面の作成には新旧議長の意向がかなり反映されますから、これは新議長であるオーストラリアのピーター・キング氏の恣意的操作である、というのがNGO側の見解です。ISPの首席をつとめる英国のブライアン・ウィルキンズ教授は、この議事録にかなり腹をたてていて、本会議での彼のスピーチがどのようなものになるか、注目されます。オーストラリア自然保護基金(ACF)のデイブと原生自然協会(TWS)のアレックがウィルキンズ教授に集中的にロビーイングをかけています。

文化・社会的影響に関しては、オーストラリア政府がアボリジニー側を非難する作戦(文化保全計画の交渉にアボリジニーが協力しないことが対策の遅れであるという主張)が、かなり各国政府代表に浸透していて、本会議では、これまでとは違う方針が検討される(具体的には、両者の交渉を仲介・促進するような作業部会の設立を検討)ことになりそうです。すくなくともビューローからはそのような提案がなされています。これは、ミラルにとっては、非常な圧力です。つまり、「交渉に協力する」ことが前提とされてしまっているのですから。そもそも、文化保全策をとらないまま、開発計画をどんどん進めてきてしまっていること自体が問題であり、ミラルはその点を厳しく批判しているのに、そのことが不問に付されようとしているのですから。

ジャッキーは、「京都会議はもうずっと過去のことのようだ」と言います。京都会議でアボリジニー側の主張は各国政府から予想以上の好意的反応をひきだしましたが、同時にそれゆえに、深刻な意見の対立が委員会のなかに生じました。ユネスコというのは、安全保障委員会や温暖化会議とはちがって、学者・文化人の「仲良しクラブ」的な色彩が今でも濃厚なので、京都会議でのようなはりつめたムードは基本的に忌避されます。各国代表のおおかたの雰囲気としては、「まずオーストラリア政府とアボリジニーとでよく話し合ってくれ、そこから妥協案が出てくれば、委員会としてその内容を評価するから」、といったところ。これでは、オーストラリア政府の思う壷なのです。

ともあれ、ミラル側(グンジェイッミ先住民族法人のスタッフ)と連邦政府(環境省の事務方)とのロビー会合がくり返されています。残念ながら、細川は立ち会うことが許されていませんので、後から双方から話をきいて事態を推測するしかありません。おって、報告していきます。
■前号でのビューロー会議の様子の報告で、重大な点をひとつ落としていました。というか、昨日の会議での議論をきいていて、ようやく理解した次第なのですが、オーストラリア政府はすさまじい提案をしたそうです。
すなわち、世界遺産条約の運用指針(operational guideline) の改正案を提起。実際に素案を文書で配付したそうです。この文書は、あまりの評判の悪さに撤回されたため、会議資料の番号はついていません。改正内容はいろいろありますが、目玉は「危機遺産の指定にあたっては、当事国の同意を必要とする」という点。つまり、カカドゥ国立公園であれば、オーストラリア政府の同意が無ければ危機遺産に指定できない、というわけです。試合の直前に(というか、これまでの何回もの会議で延々と議論されてきた経緯を考えれば「試合の最中に」というべきでしょうが)ルールの変更を申し出ているわけで、ぶっとびます。

この提案は、さすがにビューローでは承認されず。しかし、オーストラリア政府はあきらめてませんので、本会議でも紛糾は必至。初日から、すでに小波瀾が続いています。あれやこれやで、ビューローの議事録報告の承認を留保する国(ギリシャ、イタリア、南アフリカなど)がでました。本格的には今日(第2日)に審議されます。初日の反応からすると、オーストラリア政府の改正案はそのまま委員会にかけると潰れてしまうので、オーストラリア政府の提案を検討するための作業部会を設けるような方向に進むのかな、というのが細川の予想です。(はずれるかもしれませんが。)
■初日に、副委員長(vice-president、ビューローの副議長をかねる)の交代があり(これは定例)、タイのアドゥーン・ウィチエンチャルーン博士が選出されました。京都会議で、カカドゥ国立公園でのウラン開発に対して非常に厳しい(また格調高い)発言をして、会議の流れを一気に「工事停止勧告」に方向づけた人です。
(→とーちさん作成のホームページ http://SaveKakadu.org に当時の発言内容が紹介されています)

細川としては、これは非常にいい人選だと思うのですが、アレック(TWS)は「あいつはパリ会議では変節した(オーストラリア政府の外交圧力に屈した)から、ダメだ!」と苦虫をかんでます。それでも、アドゥーン博士に対する各国代表からの人望はきわめて高く、また彼自身も積極的に発言する人なので、会議の行方を握る鍵人物といえるでしょう。
■今回の会議に、日本からは、外務省・環境庁・文化庁などの人が8人ほど来ているようです。(初日に配付されたリストには5人の名前しか載ってませんが。) 外務省の高橋ナオミさん、環境庁(林野庁?)の米田クミコさん、ご存じの方ありましたら、細川まで御連絡ください。
いま、日本はビューローからも委員からも外れているせいか、かなり軽量級の代表団です。会議の進行や裏交渉への影響力はほとんど無いだろうと思われます。

■会議参加国は、幹事国(ビューロー)7ヶ国、委員国14ヶ国(委員会は幹事国もふくめ21票で構成)、非委員国がざっと数えたところ20ヶ国あまり。(公式の参加者リストは、ユネスコ事務局が作成中)
公式諮問機関が4、オブザーバーNGOが18です。ざっと350人規模ですので、温暖化会議などにくらべると小さい会議です。なぜか、米国代表が見当たらない。まさか来てないということはないと思いますが。
—————-
 会議場の入り口では、カカドゥ国立公園の保全を求めるグループ(若い人中心だが、オッサンも混じってます)が、色とりどりの横断幕をたくさんかかげ、太鼓をどんすか叩き、賑やかです。警官が約1名(!)配備されていて、のんびりした雰囲気。うむ、オーストラリアだなあ。

 会議場の建物の壁のあちこちに、「ロバート・ヒル指名手配書」(Wanted: Robert Hill) という緑のビラが貼ってあります。ごぞんじ、オーストラリア連邦環境省の大臣ですが、一貫してジャビルカ開発を強引にすすめてきたことをはじめ、「開発大臣」の異名をとっています。なんでもハーグでのCOP6では、ウラン輸出量を二酸化炭素削減への貢献にカウントする(「sinkとみなす」!)ためのアイデアを披露したとかで、ま、そりゃ指名手配もんですわな。

 イボンヌさんは、少し疲れているとのことで、初日はオフ、静養。

 
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2000.11.27 ジャビルカ通信 第129号

2000.11.27 ジャビルカ通信 第129号

 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃ 世界遺産委員会ケアンズ会議、いよいよ開幕  ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 こんにちは、細川です。キンバリー地方(西オーストラリア州)での仕事をいったん中断、豪州大陸を一気に横切って、クインズランド州ケアンズに昨晩つきました。今朝から、いよいよユネスコ世界遺産会議(WHC)がケアンズで始まります。当地は、雨模様。気温32度です。(キンバリーはひどいときは40度をこえますが、乾燥しているので、木陰にいれば何とかしのげます。ケアンズは蒸し暑いのがこたえます。もっとも会議場 Cairns Convention Centre では「冷房病」になるかもしれませんが。)

 今回はオーストラリアが議長国です。ジャビルカ問題は、最大の案件のひとつ。ミラル・アボリジニーは強力なロビー団を送り込んできています(後述)。環境団体からは、オーストラリア自然保護基金(ACF)、地球の友(FOE)オーストラリア、北部準州環境センター(ECNT)、原生自然協会(TWS)の代表者が勢揃い。「ジャビルカ行動連絡会」(JAG)のブリズベン支部も、会議参加資格はもたないものの、支援に駆けつけてくれています。

 細川は、地球の友ジャパン(FOE-J)のご好意により、FOE-Jからの派遣ということでユネスコから公式オブザーバー資格を取得できました。オブザーバーには発言権がありませんが、(マスコミが傍聴できない部分もふくめて)会議への出席が許可され、各国政府代表と接触できます。また、会議資料を自由にもらえるので便利です。ただし、非公式の秘密会 (closed meeting) からは閉め出されます。(この点は、委員国以外の政府代表と「同等」ですが。)

 ジャビルカ問題が本会議にかかるのは、たぶん水曜日になると思われますが、それまで政府間の「非公式協議」(裏取り引き)がいろいろな形でおこなわれます。われわれNGOオブザーバーは、その間、ロビーイングとメディア対応に追われます。毎朝、NGO寄り合いをひらいて、情報交換しつつ、やっていきます。

 日本は、今回は、委員国ではありません。アジア地区からは(日本とならんでジャビルカ・ウランの輸入予定国である)韓国が委員国です。日本政府と韓国政府のあいだ(あるいは関西電力と韓国電力のあいだ)に、ジャビルカ鉱山問題をめぐっていかなる協議・検討がなされているかは、まったく不明ですが、なるべく探ってみます。

 ジャビルカ問題以外にも、いくつか重要な案件(グレートバリア・リーフの保全、オーストラリア熱帯雨林の開発問題、ブルーマウンテンの世界遺産登録、国立公園の管理運営へのアボリジニーの参加問題、文化遺産としての少数民族言語の保護の問題など)があり、これらの領域で活動している研究者やNGOと情報交換をします。ジャビルカとならんで、今回最大の懸案は、聖地エルサレム(文化遺産)の取り扱い。これは細川の「専門外」ですが、資料等は入手しておくようにします。世界遺産条約の運用規則の改訂(たぶん改悪)も審議される方向で、場合によっては、これがもっとも紛糾する議題となるかもしれません。

 委員会の本会議にさきだって、幹事国(ビューロー)会合が、すでに先週の木曜・金曜におこなわれました。細川は日程の調整がつかず、ビューロー会議には出られず。昨夜、ACFのデイブ・スウィーニー(映画『ジャビルカ』でおなじみのお兄さん)と会って、様子をききました。だいたいの状況は、以下の通りです。

(1)ジャビルカ鉱山計画の自然環境への影響評価については、国際自然保護連合(IUCN)と独立科学委員会(ISP)が報告書を提出、ビューロー会合で了承された。報告書の内容は本会議に審議される。IUCNは京都会議いらい、ジャビルカ鉱山がカカドゥ国立公園の環境保全とは両立しないという態度を一貫して維持しており、今回のレポートでも「危機遺産への指定」を勧告している。これに対して、ISP(京都会議で設立がきまった第三者評価組織)のレポートは、「十分な対策をとれば環境汚染を最小限にとどめた操業が可能」としているものの、必ずしも開発を推奨している訳ではなく、委員長(英国人の環境学者)は非常に慎重な立場(玉虫色にも見える)をとっています。オーストラリア政府は本会議でISP報告が
「安全宣言」と解釈されるような方向にもっていく作戦。アボリジニーおよび環境団体は、そのような曲解・恣意的解釈をしないよう、各国代表にはたらきかけます。

(2)文化・社会面での影響については、オーストラリア政府とアボリジニー組織(グンジェイッミ先住民族法人と北部土地評議会)のあいだの協議が暗礁にのりあげていること(文化保全計画の策定が大幅におくれていること)を、多くの国は批判的に受け止めているようです。オーストラリア政府は、この点を本会議でどのように説明するかが、審議の行方を左右するひとつの鍵となります。

(3)ERA社の経営権を握ったリオ・ティント社(通信127号参照)は、ERA社をフランス核燃料公社(コジェマ)に売却する方針をほぼ固め、コジェマとの交渉もかなり進んでいるという(信頼すべき筋からの)情報があります。フランス政府代表が、今回の会議でどのような発言をするか、おおいに注意が必要です。

(4)悪しき「松浦流」が定着してしまったと言うべきでしょうが、ビューローでは、NGOオブザーバー(つまり私どもですが)がマスコミに会議の内容を詳述することを「禁じる」という方針が確認された(トゥーリ委員長=モロッコ=の発言)そうです。オブザーバー資格は委員長によっていつでも剥奪される可能性がある(その旨、あらかじめ文書で通告を受けています)ので、難しいところですが、一方で記者さんたちは本会議を傍聴できないことにかなり腹をたてています —京都会議を取材された皆さんには、おなじみの状況 ^^); — ので、やはりマスコミへの情報提供はNGOとしての重要な、欠かせない役割です。この点は、ACFなどの仲間と緊密に連絡をとりつつ、対応していきます。

(5)総合的な見通しとして、本会議で「危機遺産指定」をめぐる投票がおこなわれる可能性は低いです。(昨年のパリ会議では投票がおこなわれ、否決された)。ただ、ハンガリー、フィンランドなど、一部の国があくまで「危機遺産指定」を求める態度をとっているようで、場合によっては動議が提出されて投票ということになるやもしれません。

(6)オーストラリア政府は、ともかくジャビルカを「国内問題」に引き戻そう(ユネスコが干渉する余地を最小限にとどめよう)とやっきになっています。ミラルおよびNGOは、開発計画をあくまで国際社会の監視下におくことを求める、という点をロビーイングの要点とする作戦です。これは、ジャビルカのみならず、世界遺産保全の枠組みそのものにかかわることなので、開発容認に近い立場をとる国々からも一定程度の賛同をとりつけることが可能で、本会議での議論の行方を大きく左右することも不可能ではありません。(この点は、ISPはオーストラリア政府とは反対の立場を明確にとっています。)
■ミラル・アボリジニーの代表は、ごぞんじ、イボンヌ・マルガルラさん。ネゴシエーターは、ジャッキー・カトナに加えて、トラッカー・ティルマウス氏(もと中央土地評議会事務局長)、ジャスティン・オブライエン氏(連邦議会の民主党アリスン上院議員のもと政策秘書)という強力な布陣。映画『ジャビルカ』でおなじみのクリスティーヌも駆けつけています。(トラッカーとジャスティンについては、「ノーニュークス・アジア・フォーラム」のニューズレター(10月号)に書きました。)

■一方、政府(開発推進)側も、オーストラリア連邦環境省のロジャー・ビール次官(ご存知、COP3京都の悪役)が、COP6(ハーグ会議)をぶちこわしたその足でケアンズに駆けつけてくるなど、あいかわらずジャビルカ開発にかける意気込みは尋常ならざるものがあります。
さてさて、お立ち会い。
★★★イボンヌさんたちへのメッセージがあれば、メールまたはファックスでどうぞ!
 メール→ itachimaru@nifty.ne.jp
 ファックス→ 0011-61-7-4031-1526 (Dr Hosokawa, Rm 210)
(日本語でも結構です。翻訳してわたします。でも、できるだけ簡潔にね。)

 

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「ジャビルカ通信」バックナンバー閲覧: 
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