2000.11.28 ジャビルカ通信 第130号

2000.11.28 ジャビルカ通信 第130号

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 ┃ ビューロー会議の議事録、承認されず   ┃
 ┃ 委員会の改革案をめぐって、はやくも紛糾 ┃
 ┃ 世界遺産条約そのものの改訂も視野に   ┃
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 ┃ 連邦環境大臣に「指名手配書」!     ┃
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 世界遺産会議の初日の様子です。ケアンズは雨模様。
 原生自然協会(TWS)のアレック・マーさん(京都会議に来日したひげもじゃ熊さん)が、日本の皆さん、とくに京都の皆さんによろしく! と顔をほころばせています。とりわけ、アイリーン・スミスさんにエールを送りたい、とのこと。「グリーン・アクションは頑張っておるか? 財政は大丈夫か?」と心配しているので、「大丈夫、大丈夫、そう簡単にはつぶれんよ」と無責任にも請け合っておきました。
 さて、ジャビルカ問題をめぐる情勢は、思いのほか厳しく、ジャッキー・カトナは顔をくもらせています。

自然環境への影響に関しては、前号でお知らせした独立科学者パネル(ISP)の報告(第3報告)が議論の鍵となります。ビューロー会議(先週)の議事録では、ISPの報告がかなり都合良く(つまり鉱山開発の容認につながる部分を中心に)「要約」されています。議事録の文面の作成には新旧議長の意向がかなり反映されますから、これは新議長であるオーストラリアのピーター・キング氏の恣意的操作である、というのがNGO側の見解です。ISPの首席をつとめる英国のブライアン・ウィルキンズ教授は、この議事録にかなり腹をたてていて、本会議での彼のスピーチがどのようなものになるか、注目されます。オーストラリア自然保護基金(ACF)のデイブと原生自然協会(TWS)のアレックがウィルキンズ教授に集中的にロビーイングをかけています。

文化・社会的影響に関しては、オーストラリア政府がアボリジニー側を非難する作戦(文化保全計画の交渉にアボリジニーが協力しないことが対策の遅れであるという主張)が、かなり各国政府代表に浸透していて、本会議では、これまでとは違う方針が検討される(具体的には、両者の交渉を仲介・促進するような作業部会の設立を検討)ことになりそうです。すくなくともビューローからはそのような提案がなされています。これは、ミラルにとっては、非常な圧力です。つまり、「交渉に協力する」ことが前提とされてしまっているのですから。そもそも、文化保全策をとらないまま、開発計画をどんどん進めてきてしまっていること自体が問題であり、ミラルはその点を厳しく批判しているのに、そのことが不問に付されようとしているのですから。

ジャッキーは、「京都会議はもうずっと過去のことのようだ」と言います。京都会議でアボリジニー側の主張は各国政府から予想以上の好意的反応をひきだしましたが、同時にそれゆえに、深刻な意見の対立が委員会のなかに生じました。ユネスコというのは、安全保障委員会や温暖化会議とはちがって、学者・文化人の「仲良しクラブ」的な色彩が今でも濃厚なので、京都会議でのようなはりつめたムードは基本的に忌避されます。各国代表のおおかたの雰囲気としては、「まずオーストラリア政府とアボリジニーとでよく話し合ってくれ、そこから妥協案が出てくれば、委員会としてその内容を評価するから」、といったところ。これでは、オーストラリア政府の思う壷なのです。

ともあれ、ミラル側(グンジェイッミ先住民族法人のスタッフ)と連邦政府(環境省の事務方)とのロビー会合がくり返されています。残念ながら、細川は立ち会うことが許されていませんので、後から双方から話をきいて事態を推測するしかありません。おって、報告していきます。
■前号でのビューロー会議の様子の報告で、重大な点をひとつ落としていました。というか、昨日の会議での議論をきいていて、ようやく理解した次第なのですが、オーストラリア政府はすさまじい提案をしたそうです。
すなわち、世界遺産条約の運用指針(operational guideline) の改正案を提起。実際に素案を文書で配付したそうです。この文書は、あまりの評判の悪さに撤回されたため、会議資料の番号はついていません。改正内容はいろいろありますが、目玉は「危機遺産の指定にあたっては、当事国の同意を必要とする」という点。つまり、カカドゥ国立公園であれば、オーストラリア政府の同意が無ければ危機遺産に指定できない、というわけです。試合の直前に(というか、これまでの何回もの会議で延々と議論されてきた経緯を考えれば「試合の最中に」というべきでしょうが)ルールの変更を申し出ているわけで、ぶっとびます。

この提案は、さすがにビューローでは承認されず。しかし、オーストラリア政府はあきらめてませんので、本会議でも紛糾は必至。初日から、すでに小波瀾が続いています。あれやこれやで、ビューローの議事録報告の承認を留保する国(ギリシャ、イタリア、南アフリカなど)がでました。本格的には今日(第2日)に審議されます。初日の反応からすると、オーストラリア政府の改正案はそのまま委員会にかけると潰れてしまうので、オーストラリア政府の提案を検討するための作業部会を設けるような方向に進むのかな、というのが細川の予想です。(はずれるかもしれませんが。)
■初日に、副委員長(vice-president、ビューローの副議長をかねる)の交代があり(これは定例)、タイのアドゥーン・ウィチエンチャルーン博士が選出されました。京都会議で、カカドゥ国立公園でのウラン開発に対して非常に厳しい(また格調高い)発言をして、会議の流れを一気に「工事停止勧告」に方向づけた人です。
(→とーちさん作成のホームページ http://SaveKakadu.org に当時の発言内容が紹介されています)

細川としては、これは非常にいい人選だと思うのですが、アレック(TWS)は「あいつはパリ会議では変節した(オーストラリア政府の外交圧力に屈した)から、ダメだ!」と苦虫をかんでます。それでも、アドゥーン博士に対する各国代表からの人望はきわめて高く、また彼自身も積極的に発言する人なので、会議の行方を握る鍵人物といえるでしょう。
■今回の会議に、日本からは、外務省・環境庁・文化庁などの人が8人ほど来ているようです。(初日に配付されたリストには5人の名前しか載ってませんが。) 外務省の高橋ナオミさん、環境庁(林野庁?)の米田クミコさん、ご存じの方ありましたら、細川まで御連絡ください。
いま、日本はビューローからも委員からも外れているせいか、かなり軽量級の代表団です。会議の進行や裏交渉への影響力はほとんど無いだろうと思われます。

■会議参加国は、幹事国(ビューロー)7ヶ国、委員国14ヶ国(委員会は幹事国もふくめ21票で構成)、非委員国がざっと数えたところ20ヶ国あまり。(公式の参加者リストは、ユネスコ事務局が作成中)
公式諮問機関が4、オブザーバーNGOが18です。ざっと350人規模ですので、温暖化会議などにくらべると小さい会議です。なぜか、米国代表が見当たらない。まさか来てないということはないと思いますが。
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 会議場の入り口では、カカドゥ国立公園の保全を求めるグループ(若い人中心だが、オッサンも混じってます)が、色とりどりの横断幕をたくさんかかげ、太鼓をどんすか叩き、賑やかです。警官が約1名(!)配備されていて、のんびりした雰囲気。うむ、オーストラリアだなあ。

 会議場の建物の壁のあちこちに、「ロバート・ヒル指名手配書」(Wanted: Robert Hill) という緑のビラが貼ってあります。ごぞんじ、オーストラリア連邦環境省の大臣ですが、一貫してジャビルカ開発を強引にすすめてきたことをはじめ、「開発大臣」の異名をとっています。なんでもハーグでのCOP6では、ウラン輸出量を二酸化炭素削減への貢献にカウントする(「sinkとみなす」!)ためのアイデアを披露したとかで、ま、そりゃ指名手配もんですわな。

 イボンヌさんは、少し疲れているとのことで、初日はオフ、静養。

 
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