2000.11.29 ジャビルカ通信 第133号

2000.11.29 ジャビルカ通信 第133号

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 ┃ 危機遺産リストと締約国の「拒否権」を    ┃
 ┃ めぐって、意見対立             ┃
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 ┃ カカドゥ問題をめぐって、オーストラリア政府と┃
 ┃ IUCNが歩み寄った(秘密会)と書記報告  ┃
 ┃ 詳細は、29日に文書配付される模様     ┃
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世界遺産会議、第2日(28日)の様子をお伝えします。

(会議は毎日9am-7pmくらい、ロビーイングはいつも夜まで及び、またNGO寄り合いが830amからあるので、この通信は、翌日の朝、6am-730amくらいに書いています。あたふたと書いてますので、文章がこなれていない点はお許しください。)

(マック以外の機種で受信される方は、フランス語のアクセント記号が文字化けすると思いますが、お許しください。)
ジャビルカ/カカドゥ国立公園の件は、秘密会での折衝(オーストラリア政府、国際自然保護連合IUCN、独立科学者パネルISP)が初日から平行しておこなわれています。カカドゥ国立公園の評価は、当初の議案書では28日の午後に審議される予定でしたが、書記局から「(秘密会での)折衝が数時間前にいちおう妥結して、合意文書が英語で作成された。公用語のフランス語に翻訳する時間が必要なので、あす(29日)の朝に文書配付して審議する」と、いささか唐突な発表がありました。

その文書の内容は、まだわかりません。ACFとTWSの人たちが盛んに走り回ったり携帯をかけまくって、探りをいれてますが、いつもと違ってIUCNの口が固く、またミラル側(グンジェイッミ先住民族法人)にも知らされていません。アレックはかなり苛ついています。ロジャー・ビール(オーストラリア政府)は例によってポーカーフェース。議長さん(オーストラリア政府のピーター・キング)は、なんとなく浮き浮きした様子です。

いっぽう、グンジェイッミ先住民族法人も、オーストラリア政府(環境省)とIUCNとそれぞれ別個に折衝を重ねています。ジャッキーは、ほぼグロッキー状態。トラッカーによれば、「 agree to disagree の状態だ」そうです。この内容については、ざっと聞いていますが、まだ書いちゃダメ、と言われているので、後日あらためて。

というわけで、カカドゥ/ジャビルカの件は、表舞台ではまだ議論されてないのですが、その前哨戦となる重要な議論(そして、かなり鋭い意見の対立)がありました。

世界遺産条約の運用規則(operational guideline) の改訂問題(通信129号、130号参照)ですが、危機遺産リストの認定にあたって、当事国に拒否権があるのか否かです。これは、たしかに現行の条約および運用規則では、あいまいです。指定は委員会が決定する、と書かれていますが、第11条では当該の条約締約国(つまり問題となる自然遺産/文化遺産の所在国の政府)の同意をえて世界遺産リストあるいは危機遺産リストへの登録(inscription)がおこなわれる、とされています。

ネパールのカトマンズ渓谷(歴史的集落と景観)の保全状況をめぐる議論で、IUCNは以前から危機遺産リストへの登録を勧告してきましたが、ネパール政府がIUCNの助言(保全対策)を具体的に受け入れる意向を示していることから、危機遺産への登録を見送るべきかどうかが問題となりました。

タイ代表のアドゥーン博士が、「危機遺産リストへの登録は、制裁措置ではなく、問題となる世界遺産の保全を国際社会が緊急かつ全面的に支援するということを意味するのだ」というかねてからの主張を述べたところ、オーストラリア政府のロジャー・ビール代表が「当事国の同意なしに登録する権限は委員会には無い!」とかなり強い調子でぶちあげました。これに、ベルギー・ギリシャ・ハンガリーが強く反発。ギリシャ代表(ユネスコ大使をつとめる女性)は「当事国の同意がなくても危機遺産の指定はありうる。すべては委員会が決定し、委員会のみが決定する」と、これも強い調子で主張。
ちょうど午後のお茶の時間になっていたので、キング議長は議論をきりあげるつもりで、「ほかに発言がなければ、お茶に …」と言いかけたら、なんとほとんど全ての委員国の代表が一斉に挙手しました。議長は、やむをえず、お茶のあと議論を継続することを宣言し、発言の順番を指定しました。指定からもれた国が、国名の書いてあるプラスチックの板をふりあげて(国際会議で発言を求めるときの慣習)存在をアピールし、書記局にうながされた議長がこれらの国を発言予定リストに追加しました。このような光景は、温暖化会議などでは頻繁に見られるのでしょうが、ユネスコの会議では珍しい一幕です。

(お茶のあいだも、各国代表が議論を重ねています。こうなると、細川など全然お呼びじゃない。ひたすら耳ダンボで、お菓子をぱくつくのみです。昔とった杵柄でスペイン語がききとれるのは、こういう時、ものすごく役にたちますね。)

さて、休憩後の主な発言は次の通り:

ギリシャ(フランス語/英語)「これは深刻な問題だ。拒否権を認めてしまったら、世界遺産条約の効力がいちじるしく損なわれる。危機遺産リストはブラックリストではないのだから、政治的配慮をはさまず決めるべきだ。」

南アフリカ(英語)「これはイデオロギーの領域の問題だが、この問題に関する限り、私達はイデオロギーをたたかわさざるをえない。パンドラの箱はすでにあけられたのだ。」

ハンガリー(「遺産登録の権限は、あくまで委員会にあり、委員会のみにある。」

フィンランド(英語)「おびやかされている遺産の保全に地元が努力して成果をあげている時には、危機遺産登録は見送るべきだ。そうでないと努力を低く評価したことになってしまう。」

韓国「委員会が何らかの決定をくだすときは、事前のコンセンサスが成立していることが望ましい。」

ベニン(フランス語)「我々はこの問題をもう6年近く議論してきた。現行の条約と規則には、たしかに2通りの解釈(国の同意が必要/必ずしも必要でない)を許す文面になっている。危機遺産リストというものの存在理由にたちもどって考えなくてはならない。つまり、世界遺産の劣化(d使radation)をくいとめる、ということが目的なのだ。」

タイ(英語)「11条の4には、必要があるとみなされるときには委員会が幹事国会議の審議をまたずにいかなる時点でも即座に危機遺産登録をおこなうことができる、とある。この条文を文字とおりに解釈すべきだ。一方、当時国との協議のプロセスは大事にすべきだ。」

ベルギー(フランス語)「ネパールの件でこんな長い議論になるのは驚くべきことだ。しかし、問題となっているのは条約の根本原則にかかわることなので、よく検討することが必要だ。委員会がはたすべき役割は、世界遺産を守るためのあらゆる可能な手段をとるということに尽きる。条文解釈の問題については、ユネスコの国際法担当の専門家に諮問して、きちんとした助言を受けるべきだ。」

キューバ(フランス語)「ガラパゴス諸島の保全のときと同じ扱いにすべきだ。」(細川註:当事国政府に十分な時間を与えるということ?)

インド(英語)「…(ききとれず)」

モロッコ(フランス語)「もし、当事国政府が委員会に同意しない事態になったら、委員会としてどのような手段が残されるのか、よく考えなければならない。」(細川註:これは意味深長な発言です。カカドゥ国立公園の件がまさにそういう状況なので。)「特定の案件についての決定を下す必要がある状況でこの原則問題を議論することは、我々にとって大変なプレッシャーであり、望ましくない。条約の解釈を確定するために、個別案件の審議からはなれた特別会議をひらいて決着をはかるべきだ。」

コロンビア(フランス語)「締約国には条約の目的を遂行する責任と義務がある。」

中国(フランス語)「原則の問題と運用の問題だ。運用の問題を重視すべきだ。委員会は当事国が効果的に保全策をとれるような方向で支援しなければならない。」

ネパール(英語)「ユネスコの助言をすべて受け入れて、あらゆる可能な保全策をとるつもりだ。」(細川註:だから危機遺産認定は見送ってほしい、という含み)
議題としては、ネパールのカトマンズ渓谷をめぐって火がついた議論ですが、もちろん総てはジャビルカ問題を念頭に発言されています。

 

 ちなみに今回の会議では、あらたに危機遺産として3件(カカドゥは除く)が登録される見込みです。
通常の世界遺産リストへの新規登録は、44件(自然遺産7件、複合遺産1件、首里城など文化遺産が36件)見込まれています。オーストラリアのブルーマウンテンの自然遺産リストへの新規登録は、微妙なところ。たぶん見送られるのではないかな。
さあ、これから朝の会議です。いよいよカカドゥ国立公園の件が議論されます。今日だけでは終わらないかも知れません。行ってきます。

(イボンヌさんも、カステラ食べて、元気を出してます。)
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