2001.8.24 ジャビルカ通信 第141号

2001.8.24 ジャビルカ通信 第141号
 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃ 北部準州(NT)で23年ぶりに労働党政権   ┃
 ┃ 初の女性首相となるマーティン党首は      ┃
 ┃ アボリジニー慣習法をとりいれた法改革を公約  ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
 予想していなかったニュースが飛び込んできました。北部準州(Northern
Territory) 議会の任期満了にともなう選挙で、労働党が勝ち、クレア・マーティン
党首(女性)が来週の月曜日に準州首相(Chief Minister) の宣誓式にのぞみます。

 あの保守的反動的なNTで、1978年以来、政権を独占していた地方自由党(CLP)
が敗れた(その差わずかに1議席!)のですから、これは大事件です。

 さて、ジャビルカ開発はCLPが強力に後押ししていた(映画『ジャビルカ』のな
かで、「ウラン鉱山はまったく環境を汚さない!」と豪語していた鉱山エネルギー大
臣を思い出してください)のですが、労働党はどうか。

 連邦労働党は、ジャビルカ開発凍結を公約にしています(総選挙はこの秋)。
しかし、NTの労働党は、ずっとジャビルカ開発推進の立場(つまり、連邦と地方と
でねじれ)。NT選出のクロッシン上院議員(労働党、女性)は、開発中止を主張し
ています。今回の選挙で、アボリジニーの議員も一挙に4名(みな労働党)となりま
したから、今後の推移は微妙です。

 そんなややこしいこと考えなくても、連邦レベルで労働党が政権を奪還すれば、話
は早いのですが。今回のNT選挙で、南オーストラリア州と首都特別地区(キャンベ
ラ)を除くすべての州・準州が労働党政権となりました。連邦総選挙でも労働党が勝
つ可能性は、いまのところ、かなり高いです。
 しばらくジャビルカ通信が滞っていました。ごめんなさい。パリでのユネスコ会議
のことなど、お伝えすべきことはいくつかあったのですが、公私ともバタバタしてお
りまして、発信できずにいます。実は、あさってから短期間ですがオーストラリアに
行ってきますので、また情勢の把握につとめます。

**************

ついでに、(ジャビルカとは直接関係ありませんが、間接的にはかなり影響しうるニ
ュースとして)南オーストラリア州で、これも10年ちかく係争が続いているハインド
マーシュ架橋問題で、新しい判決がでました(連邦裁一審)。アボリジニー側の全面
勝訴!

この訴訟では、観光開発のため州本土とハインドマーシュ島との道路橋の建設を計画
した業者が、人類学者を訴えて、損害賠償(2000万ドル!)を求めていました。判決
では、訴えが却下されたほか、訴訟のもとになった人類学者による調査(橋桁工事の
場所がアボリジニーの「女性の聖地」であるということ)の正統性が認められたとい
う点で、きわめて興味深い判決です。(今後、ほかの地域で開発とアボリジニー文化
が衝突したときに、重要な判例となる。)

「聖地」に関する情報は、アボリジニーの文化によれば、みだりに公開してはならな
いため、マスコミの取材や法廷での証言、あるいは調査委員会のインタビューに対し
ても、アボリジニーがその全貌を語ることはまず考えられませんし、人類学者がその
詳細をききとる際も非公開を条件に話してもらう場合が多いのです。このあたりの事
情はジャビルカでも、まったく同様です。ハインドマーシュ架橋問題の場合は、ジェ
ンダーの問題が絡みますので、なお込み入ってきます。

問題の橋は、もう完成してしまっています。1994年に連邦政府(当時は労働党政権)
が工事の25年間凍結を命令したのですが、その後、特別調査委員会(Royal
Commission) の審査により、アボリジニー側の主張が立証されていないと断定され、
事態は一転、凍結命令はキャンセルされ、工事は進んだのです。業者は、工事が遅れ
て損害を被ったのは、人類学者がいい加減な調査をしたからだ、として関係する人類
学者2名と当時の連邦政府アボリジニー担当大臣とを訴えた次第。今回の判決では、
業者側の主張がほぼすべて退けられました。

(なお、業者側が控訴する可能性もあります。)
over

######################################
ジャビルカ基金 事務局
   <itachimaru@nifty.ne.jp>
  606-8588 京都精華大学 流渓館213 細川研究室気付
  tel/fax 075-702-5213  
######################################