2002.2.25 ジャビルカ通信 第144号

2002.2.25 ジャビルカ通信 第144号

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 ┃ 南オーストラリア州で政権交代 ┃
 ┃ ウラン採掘推進政策は終焉か  ┃
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 3つめのニュースは、より意外な出来事ですが、2月9日、南オーストラリアで州
議会選挙がおこなわれ、これまでの与党でウラン開発推進の立場をとっていた自由党
が政権の座を追われることになりそうです。「なりそうです」というのは、3月の新
議会で州首相の指名がすむまでは、まだ何が起こるか分からないからですが、おそら
く、労働党(ウラン開発抑制の立場)が久々に政権に返り咲くことになるでしょう。
実はこれまでも自由党は議席の過半数をもたず、無所属議員の支持をとりつけて政権
を維持してきたのですが、今回の選挙後、これまで自由党と政策協定を結んでいて今
回も再選された無所属のピーター・ルイス議員が、突然、労働党支持に態度を変えた
のです。裏で何があったのか、よく分かりません。労働党の関係者も「えっ?!」っ
というような変わり身だとのこと。

労働党も州上院で過半数をとってませんので、きわどい話ですが、ウラン採掘や核廃
棄物処分問題に関して南オーストラリア州政府の方針がこれまでと違う方向にむくこ
とが期待されます。事故をおこしたビバリー鉱山の再開許可もしばらく先になるでし
ょう。(自由党政権だったら、すぐに再開許可書にスタンプがおされちゃうところで
す。)

労働党の州委員長で州首相につくことになる人物の名前が、なんと(偶然ですが)お
もろいことに、マイクル・ウラン(Michael Rann)さん! 

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ジャビルカ基金 事務局
   <itachimaru@nifty.ne.jp>
  606-8588 京都精華大学 流渓館213 細川研究室気付
  tel/fax 075-702-5213  
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2002.2.24 ジャビルカ通信 第142号

2002.2.24 ジャビルカ通信 第142号

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 ┃ ビバリー・ウラン鉱山で漏洩事故  ┃
 ┃ ウラン汚染水、約70トン流出   ┃
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 さてもさても、半年ぶりのジャビルカ通信です。何も動きが無かったわけではない
のですが、ながいこと発信できずにごめんなさい。

12月には、例によってユネスコ世界遺産委員会がヘルシンキでひらかれましたが、
ジャビルカ計画での大きな進展はありませんでした。一方、98年の京都会議のとき
にジャビルカと同時に議論されていたバイカル湖については「危機遺産」に認定する
方向で議論が決着したようです。

年があけてから、ジャビルカとは別の話ですが、核開発をめぐってオーストラリアで
いくつか注目すべき出来事が立て続けにおきました。それらについて、順次、配信し
ていきます。

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まず、1月11日、南オーストラリアのビバリー・ウラン鉱山で、漏洩事故がありま
した。
(ビバリー鉱山をめぐるこれまでの状況については、『ジャビルカ通信』84号、『原
子力資料情報室通信』288号、『ノーニュークス・アジア・ フォーラム2000報告集』
p.27をごらんください。地元の先住民族、アズニャマタナの人々は、一貫してウラン
開発に反対し続けています。)

この鉱山は、ISL方式(in-situ leaching)という、著しく地下水を汚染する操業
方式をとっているのですが、そのISLの主配管が破裂し、推定でウラン13キログラ
ムをふくむ希硫酸溶液6万2千リットルが流出し、一部は鉱山の敷地外に漏れまし
た。

ビバリー鉱山を操業するヒースゲイト社(米国資本)は「すぐに州政府に通報した」
と言いますが、州政府が事故を公表したのは24時間以上たってからでした。

配管の破裂は、コンピュータ・プログラムの欠陥が原因。ウラン精製設備内での点検
整備のため、パイプを止栓したのに、採掘地点(地下水ごとウランをくみあげるボー
リング地点)からの流入を止めるようになっていなかった。そのため、配管内の水圧
がどんどん高まり、L字接合部(浜岡事故でおなじみ…)が耐えきれず、ぶしゅ
=!

なんとお粗末な、と思われるでしょうが、これまで核施設での多くの深刻な事故は、
実に「お粗末な」経緯でおきているのです。今回の漏洩事故は、さいわい、「深刻
な」汚染事故ではありませんが、ISL方式の鉱山でお粗末なことをすれば、もっと
深刻で広範囲の汚染につながる事故がかんたんに起こりうるということを、はっきり
と示しています。

誰だい、ISLはもっとも安全性の高いウラン採掘方式だ、とのたもうたのは? 正
常時に労働者被曝が少なくてすむというのは、たしかにそうかもしれないが、今度の
事故で、漏洩した溶液の施設外流出をふせぐためにセッセとスコップで溝掘りをさせ
られた現場の人たち、ウラン溶液がしみこんだ土塵をかなり吸引してしまったんじゃ
ないかしら。
★ちなみにヒースゲイト社とは住友商事が精製ウランの買い付け契約をしているとき
いていますが、どなたか詳しいこと御存知ないでしょうか? 
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2002.2.24 ジャビルカ通信 第143号

2002.2.24 ジャビルカ通信 第143号

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 ┃ 豪州の「砂漠に核のゴミ」構想、断念 ┃
 ┃ パンゲア社、オーストラリアから撤退 ┃
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  高レベル放射性廃棄物の国際集中処分場(つまり多くの国の核廃棄物をまとめて
引き受けるということ)のオーストラリアでの建設を計画してきたパンゲア社(=パ
ンジーア社)は、1月末、メルボルンとパースに置いていた事務所をたたみ、その
後、同社がオーストラリアでの立地計画を断念し、処分場ビジネスから撤退すること
が確認されました。
(パンゲア計画のこれまでの推移については、『ジャビルカ通信』98号を御覧下さ
い。)

パンゲア計画への最大の出資者になると目されていた英国の核燃料公社(BNFL)が、
出資をとりやめる方針を固めたことが、直接のひきがねとなり、パンゲア社
(Pangea International)自体が、高レベル処分場ビジネスから撤退することを決断
したようです。BNFLは関西電力むけMOX製造過程での数々の不祥事が一昨年来、次々
と明らかになり、みずからの経営が傾く事態においこまれています。

パンゲア計画では、南オーストラリア州にビラ・カリーナ地区か、西オーストラリア
州のオフィサー盆地地区が、高レベル廃棄物の地層処分場の候補にあげられていたま
した。ビラ・カリーナでは、土地の本来の所有者であるアボリジニー集団(主にアン
ダカリニャ系の人たち)が明確に反対の意志を表明しています。オフィサー盆地は、
かつて日本の動燃事業団(現在の核燃サイクル機構)がウラン試掘をして汚したま
ま、後始末もせずに放置している地区です。

もし、パンゲア社の当初の皮算用通り、このいずれかの土地に地層処分場ができてい
たら、そこには、アルゼンチン、パキスタン、ブラジル、オランダ、南アフリカ、ド
イツ、スイスなどの国々から使用済み燃料棒や再処理廃液固化体などが集中的に持ち
込まれるところでした。かつては東大の鈴木篤之教授もこの計画の「技術顧問」でし
たので、日本からの持ち込みの可能性も検討されていたふしがあります。

核開発推進派のあいだで「有望視」されていた豪州大陸でのパンゲア計画が頓挫した
として、上記の国々の核廃棄物はどうなるのでしょう?

それぞれ自分の国でなんとかしなさい、というのがひとつのシナリオ。しかし、ロシ
アが引き受けるという話も繰り返し浮上していますし、チベット、ナミビア、ニジェ
ールなどのウラン採掘で汚染された土地はつねに「検討対象」にされてきました。核
実験場として汚染されたマーシャル諸島が狙われているという噂もあります。パンゲ
ア社が退場したとしても、「核のゴミ・ビジネス」の駆け引きは、当分やまないでし
ょう。

世界のどこにも捨て場はないのだ、ということを分からせなければなりません。
(パンゲア社の撤退については、NIRS/WISE Nuclear Monitorの最新号=2月15日付
563号でも詳報されています。)

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