2002.2.24 ジャビルカ通信 第142号

2002.2.24 ジャビルカ通信 第142号

 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃ ビバリー・ウラン鉱山で漏洩事故  ┃
 ┃ ウラン汚染水、約70トン流出   ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
 さてもさても、半年ぶりのジャビルカ通信です。何も動きが無かったわけではない
のですが、ながいこと発信できずにごめんなさい。

12月には、例によってユネスコ世界遺産委員会がヘルシンキでひらかれましたが、
ジャビルカ計画での大きな進展はありませんでした。一方、98年の京都会議のとき
にジャビルカと同時に議論されていたバイカル湖については「危機遺産」に認定する
方向で議論が決着したようです。

年があけてから、ジャビルカとは別の話ですが、核開発をめぐってオーストラリアで
いくつか注目すべき出来事が立て続けにおきました。それらについて、順次、配信し
ていきます。

—●————–

まず、1月11日、南オーストラリアのビバリー・ウラン鉱山で、漏洩事故がありま
した。
(ビバリー鉱山をめぐるこれまでの状況については、『ジャビルカ通信』84号、『原
子力資料情報室通信』288号、『ノーニュークス・アジア・ フォーラム2000報告集』
p.27をごらんください。地元の先住民族、アズニャマタナの人々は、一貫してウラン
開発に反対し続けています。)

この鉱山は、ISL方式(in-situ leaching)という、著しく地下水を汚染する操業
方式をとっているのですが、そのISLの主配管が破裂し、推定でウラン13キログラ
ムをふくむ希硫酸溶液6万2千リットルが流出し、一部は鉱山の敷地外に漏れまし
た。

ビバリー鉱山を操業するヒースゲイト社(米国資本)は「すぐに州政府に通報した」
と言いますが、州政府が事故を公表したのは24時間以上たってからでした。

配管の破裂は、コンピュータ・プログラムの欠陥が原因。ウラン精製設備内での点検
整備のため、パイプを止栓したのに、採掘地点(地下水ごとウランをくみあげるボー
リング地点)からの流入を止めるようになっていなかった。そのため、配管内の水圧
がどんどん高まり、L字接合部(浜岡事故でおなじみ…)が耐えきれず、ぶしゅ
=!

なんとお粗末な、と思われるでしょうが、これまで核施設での多くの深刻な事故は、
実に「お粗末な」経緯でおきているのです。今回の漏洩事故は、さいわい、「深刻
な」汚染事故ではありませんが、ISL方式の鉱山でお粗末なことをすれば、もっと
深刻で広範囲の汚染につながる事故がかんたんに起こりうるということを、はっきり
と示しています。

誰だい、ISLはもっとも安全性の高いウラン採掘方式だ、とのたもうたのは? 正
常時に労働者被曝が少なくてすむというのは、たしかにそうかもしれないが、今度の
事故で、漏洩した溶液の施設外流出をふせぐためにセッセとスコップで溝掘りをさせ
られた現場の人たち、ウラン溶液がしみこんだ土塵をかなり吸引してしまったんじゃ
ないかしら。
★ちなみにヒースゲイト社とは住友商事が精製ウランの買い付け契約をしているとき
いていますが、どなたか詳しいこと御存知ないでしょうか? 
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ジャビルカ基金 事務局
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  606-8588 京都精華大学 流渓館213 細川研究室気付
  tel/fax 075-702-5213  
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2002.2.24 ジャビルカ通信 第143号

2002.2.24 ジャビルカ通信 第143号

 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃ 豪州の「砂漠に核のゴミ」構想、断念 ┃
 ┃ パンゲア社、オーストラリアから撤退 ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

  高レベル放射性廃棄物の国際集中処分場(つまり多くの国の核廃棄物をまとめて
引き受けるということ)のオーストラリアでの建設を計画してきたパンゲア社(=パ
ンジーア社)は、1月末、メルボルンとパースに置いていた事務所をたたみ、その
後、同社がオーストラリアでの立地計画を断念し、処分場ビジネスから撤退すること
が確認されました。
(パンゲア計画のこれまでの推移については、『ジャビルカ通信』98号を御覧下さ
い。)

パンゲア計画への最大の出資者になると目されていた英国の核燃料公社(BNFL)が、
出資をとりやめる方針を固めたことが、直接のひきがねとなり、パンゲア社
(Pangea International)自体が、高レベル処分場ビジネスから撤退することを決断
したようです。BNFLは関西電力むけMOX製造過程での数々の不祥事が一昨年来、次々
と明らかになり、みずからの経営が傾く事態においこまれています。

パンゲア計画では、南オーストラリア州にビラ・カリーナ地区か、西オーストラリア
州のオフィサー盆地地区が、高レベル廃棄物の地層処分場の候補にあげられていたま
した。ビラ・カリーナでは、土地の本来の所有者であるアボリジニー集団(主にアン
ダカリニャ系の人たち)が明確に反対の意志を表明しています。オフィサー盆地は、
かつて日本の動燃事業団(現在の核燃サイクル機構)がウラン試掘をして汚したま
ま、後始末もせずに放置している地区です。

もし、パンゲア社の当初の皮算用通り、このいずれかの土地に地層処分場ができてい
たら、そこには、アルゼンチン、パキスタン、ブラジル、オランダ、南アフリカ、ド
イツ、スイスなどの国々から使用済み燃料棒や再処理廃液固化体などが集中的に持ち
込まれるところでした。かつては東大の鈴木篤之教授もこの計画の「技術顧問」でし
たので、日本からの持ち込みの可能性も検討されていたふしがあります。

核開発推進派のあいだで「有望視」されていた豪州大陸でのパンゲア計画が頓挫した
として、上記の国々の核廃棄物はどうなるのでしょう?

それぞれ自分の国でなんとかしなさい、というのがひとつのシナリオ。しかし、ロシ
アが引き受けるという話も繰り返し浮上していますし、チベット、ナミビア、ニジェ
ールなどのウラン採掘で汚染された土地はつねに「検討対象」にされてきました。核
実験場として汚染されたマーシャル諸島が狙われているという噂もあります。パンゲ
ア社が退場したとしても、「核のゴミ・ビジネス」の駆け引きは、当分やまないでし
ょう。

世界のどこにも捨て場はないのだ、ということを分からせなければなりません。
(パンゲア社の撤退については、NIRS/WISE Nuclear Monitorの最新号=2月15日付
563号でも詳報されています。)

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2001.8.24 ジャビルカ通信 第141号

2001.8.24 ジャビルカ通信 第141号
 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃ 北部準州(NT)で23年ぶりに労働党政権   ┃
 ┃ 初の女性首相となるマーティン党首は      ┃
 ┃ アボリジニー慣習法をとりいれた法改革を公約  ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
 予想していなかったニュースが飛び込んできました。北部準州(Northern
Territory) 議会の任期満了にともなう選挙で、労働党が勝ち、クレア・マーティン
党首(女性)が来週の月曜日に準州首相(Chief Minister) の宣誓式にのぞみます。

 あの保守的反動的なNTで、1978年以来、政権を独占していた地方自由党(CLP)
が敗れた(その差わずかに1議席!)のですから、これは大事件です。

 さて、ジャビルカ開発はCLPが強力に後押ししていた(映画『ジャビルカ』のな
かで、「ウラン鉱山はまったく環境を汚さない!」と豪語していた鉱山エネルギー大
臣を思い出してください)のですが、労働党はどうか。

 連邦労働党は、ジャビルカ開発凍結を公約にしています(総選挙はこの秋)。
しかし、NTの労働党は、ずっとジャビルカ開発推進の立場(つまり、連邦と地方と
でねじれ)。NT選出のクロッシン上院議員(労働党、女性)は、開発中止を主張し
ています。今回の選挙で、アボリジニーの議員も一挙に4名(みな労働党)となりま
したから、今後の推移は微妙です。

 そんなややこしいこと考えなくても、連邦レベルで労働党が政権を奪還すれば、話
は早いのですが。今回のNT選挙で、南オーストラリア州と首都特別地区(キャンベ
ラ)を除くすべての州・準州が労働党政権となりました。連邦総選挙でも労働党が勝
つ可能性は、いまのところ、かなり高いです。
 しばらくジャビルカ通信が滞っていました。ごめんなさい。パリでのユネスコ会議
のことなど、お伝えすべきことはいくつかあったのですが、公私ともバタバタしてお
りまして、発信できずにいます。実は、あさってから短期間ですがオーストラリアに
行ってきますので、また情勢の把握につとめます。

**************

ついでに、(ジャビルカとは直接関係ありませんが、間接的にはかなり影響しうるニ
ュースとして)南オーストラリア州で、これも10年ちかく係争が続いているハインド
マーシュ架橋問題で、新しい判決がでました(連邦裁一審)。アボリジニー側の全面
勝訴!

この訴訟では、観光開発のため州本土とハインドマーシュ島との道路橋の建設を計画
した業者が、人類学者を訴えて、損害賠償(2000万ドル!)を求めていました。判決
では、訴えが却下されたほか、訴訟のもとになった人類学者による調査(橋桁工事の
場所がアボリジニーの「女性の聖地」であるということ)の正統性が認められたとい
う点で、きわめて興味深い判決です。(今後、ほかの地域で開発とアボリジニー文化
が衝突したときに、重要な判例となる。)

「聖地」に関する情報は、アボリジニーの文化によれば、みだりに公開してはならな
いため、マスコミの取材や法廷での証言、あるいは調査委員会のインタビューに対し
ても、アボリジニーがその全貌を語ることはまず考えられませんし、人類学者がその
詳細をききとる際も非公開を条件に話してもらう場合が多いのです。このあたりの事
情はジャビルカでも、まったく同様です。ハインドマーシュ架橋問題の場合は、ジェ
ンダーの問題が絡みますので、なお込み入ってきます。

問題の橋は、もう完成してしまっています。1994年に連邦政府(当時は労働党政権)
が工事の25年間凍結を命令したのですが、その後、特別調査委員会(Royal
Commission) の審査により、アボリジニー側の主張が立証されていないと断定され、
事態は一転、凍結命令はキャンセルされ、工事は進んだのです。業者は、工事が遅れ
て損害を被ったのは、人類学者がいい加減な調査をしたからだ、として関係する人類
学者2名と当時の連邦政府アボリジニー担当大臣とを訴えた次第。今回の判決では、
業者側の主張がほぼすべて退けられました。

(なお、業者側が控訴する可能性もあります。)
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2001.4.13 ジャビルカ通信 第140号

2001.4.13 ジャビルカ通信 第140号
 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃ リオ社、ジャビルカ開発の10年間凍結を表明  ┃
 ┃ アボリジニーは開発計画の完全廃棄を要求    ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
 ジャビルカのウラン鉱山の採掘準備をすすめてきたERA社の親会社である多国籍
企業リオ・ティント社(本社ロンドン)のウィルスン会長(Sir Robert Wilson)
は、4月12日、ロンドンでの同社の株主総会において、同社が当面のあいだジャビル
カ鉱山での採掘をはじめる予定はなく、ジャビルカ開発をむこう10年間凍結すると
述べた。

 リオ社は年明け以来、ジャビルカ鉱山の権益を売却してウラン開発部門から撤退す
る意向を示してきたが、もっとも有力な買い手とみられてきたフランス核燃料公社
(コジェマ)との交渉が不調に終わったため、ジャビルカ開発を断念するか、あるい
は自ら開発を続けるかの選択を迫られていた。

 世界遺産カカドゥ国立公園地域に位置するジャビルカ鉱山(およびすでに操業中の
隣接するレンジャー鉱山)の操業に強く反対する地元アボリジニー(ミラル)および
環境保護諸団体は、ウラン鉱山予定地(およびここ数年のうちに操業を終えるレンジ
ャー鉱山の跡地)をカカドゥ公園に統合することを求めている。その可能性について
は、リオ社は慎重に明言を避けており、今回のモラトリアム宣言にも不透明さが残
る。

 ロンドンでの株主総会に出席して、ジャビルカ計画に対する詳細な批判的見解を株
主たちの前で述べる機会を得たミラル・アボリジニーの代弁者 (spokesperson) ジャ
ッキー・カトナ女史 (Jacqui Katona) は、総会後の記者会見において、土地所有者
であるミラルは鉱山計画の完全廃棄を求め続けることを強調した。「これまでも鉱山
会社は曖昧なことを言っては、アボリジニーを騙してきた。10年間凍結という今回
の表明も、アボリジニーが本当に求めるところからはほど遠い。」

リオ・ティント社オーストラリア法人の株主総会が4月27日にシドニーで開催され
る予定であり、そこで再びジャビルカ問題をめぐる議論がたたかわされることは必至
である。

リオ社がジャビルカの権益を他者に売却する可能性は依然として残っており、持ち主
が変われば、モラトリアム(凍結)が解除されることもあり得る。しかし、3月時点
で得られた情報によれば、コジェマ(フランス核燃料公社)はジャビルカ鉱山の買い
取りを断った模様である。いわば、誰もひいてくれないジョーカーを抱えて、リオ社
は狸寝入りするほか無い、といった状況だ。
———-

前号で「次号でお伝えするが」などと書いたきり、3月は引っ越し(研究室の移転、
すなわち400個以上の荷物の佐賀から京都への移動!)に追われて、まったく続報
を書くことができなかった「日本はオーストラリアと新しいウラン輸入契約を結ぼう
としている」という件ですが、実は南オーストラリア州のビバリー鉱山(ヒースゲイ
ト社が地元アボリジニーの反対を押し切って開発中)の精製ウランを住友商事が輸入
する契約を結んだらしいのです。この件、続報。
 
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連絡先が下記の通り、変わりました。
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2001.2.11 ジャビルカ通信 第139号

2001.2.11 ジャビルカ通信 第139号
 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃ リオ社、カカドゥのウラン事業から撤退  ┃
 ┃ レンジャー鉱山の純益は10億円たらず  ┃
 ┃ 豪州ウランの日本への輸出は増大傾向   ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
 2月5日に入手した情報によれば、リオティント社はERA社の権益を売却してウ
ラニウム鉱業から撤退する方針を固めた模様(通信127号参照)。売却交渉相手は、
本命コジェマ社(フランス核燃料公社)、対抗キャメコ社(カナダ政府出資のウラン
開発事業団)の2社にほぼ絞られた。しかし、いずれの社がERA社を買い取るとし
ても、ジャビルカ開発が予定通りに強行される可能性は小さくなった。

2月7日のABC放送の定時ニュースにおいて、北部準州環境センター(ECNT)のマ
ーク・ウェイカム事務局長は、「リオティント社がカカドゥ国立公園でのウラン採掘
という悪評高い事業から撤退する決断をしたことを歓迎する」とのコメントを述べ
た。

ERA社の過去半年(2000年下半期)の収益(つまり、レンジャー鉱山のウラン採掘
・製錬・輸出による儲け)は、わずかに4億円少々であった。(これとは別に、ほぼ
同額が税金としてオーストラリア政府の収入となっている。) 上半期とあわせても
10億円にも及ばない。たかだかこれだけの利益のために、カカドゥ公園の湿地生態系
を汚染する危険をおかし、アボリジニーを抑圧し、鉱夫を被曝させたうえ、「世界遺
産を破壊する企業」としての悪名をかぶるのであるから、リオ社でなくとも、「まっ
たく合わない話だ」と判断せざるをえないだろう。
一方、オーストラリア全体としてみたウラン生産/輸出は、重量としては史上最高を
記録している(生産量でみると99年比27%増)。これは南オーストラリア州の鉱山の
操業規模拡張による増加である。(金額としては、豪ドルの不振により、実質的に減
少)
2000年1月~12月の生産量は、ウラン情報センター(UIC、推進派のシンクタンク)
の1月末の発表によると、8,937トン(イエローケーキ換算【註】)であった。この
うち8,757トンが輸出され、およそ4億2600万豪ドル(約270億円)の貿易収入をもた
らした。(しかし、経費と税をさしひいた鉱山会社の純益は、20億円足らずであろ
う。)

輸出相手は、約3分の1が日本、おなじく約3分の1が米国(ただし、そのうち一部
は濃縮後、日本むけに販売される)、残り3分の1をカナダ、ベルギー、フランス、
イギリス、韓国、スウェーデンが購入している。ドイツは、すでにオーストラリアと
の契約を終了し、更新の予定はない。

次号でお伝えするが、このような状況のなか、日本はオーストラリアと新しいウラン
輸入契約を結ぼうとしている。
【註】 1ウラン・トン (tU) を1.18イエローケーキ・トン (tU308) に換算。

 
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2000.12.28 ジャビルカ通信 第138号

(136号/ケアンズ会議続報/は事情により未配信です。近日中に発信いたします
ので、しばらくお待ちください。)
 

2000.12.28 ジャビルカ通信 第138号

 ストップ・ジャビルカ・キャンペーン(=ジャビルカ葉書キャンペーン=Stop
Jabiluka Campaign Japan)の第3回会計報告です。ご支援くださった方々に、あら
ためて篤く御礼もうしあげます。
          今期分      累計分
 —————————————    
  収入合計  178,040    1,225,725
  支出合計  155,895    1,245,342
   収支     22,145      △19,617
 —————————————    
         (黒字)     (赤字)

京都会議(1998年12月)の時点で生じた約20万円の赤字を、おかげさまで10分の1近
くにまで縮小させることができました。あと、在庫のビデオ・絵葉書などを完売すれ
ば(!!!)、めでたくトントン(希望的観測)。

2001年以降もキャンペーンは継続しますが、ケアンズ会議後の状況(および核燃料サ
イクルをめぐる世界の状況の変化)をふまえ、日本で具体的にできることを見直し、
焦点をしぼった活動をあらためて提起したいと考えています。この点については、い
まオーストラリア側の運動体(アボリジニーおよび環境団体)と意見交換をしている
ところですが、なるべく1月中に提案をまとめたいと思います。その節は、また皆さ
んからのご意見・ご提案・ご支援を仰ぎたいと存じますので、どうかよろしくお願い
いたします。
【今期分の収支明細】 期間:2000年1月~12月

収入  カンパ寄付      63,500
    ビデオ売り上げ    14,400 *註1
    ブックレット売り上げ 37,340
    絵葉書売り上げ    10,800
    その他資料売り上げ    2,000
    講演料・原稿料    50,000
支出  ブックレット仕入れ  33,600
    絵葉書仕入れ     10,500
    郵送費          8,500
    交通・宿泊費     23,971 *註2
    通信費        31,720 *註3
    文具           2,604
    印刷費・紙代     45,000

*註1:未収金3,200をふくむ。    
*註2:オーストラリアから来日したブルース・トムスンさん(地球の友オーストラ
リアのアデレード支部専従、ジャビルカ反対運動連絡会 Jabiluka Action Group の
中心メンバーのひとり)を祝島(上関原発現地)に案内した際(7月20日~21日)の
旅費の一部をジャビルカ・キャンペーンの会計から支出しました。
*註3:ホームページ維持費(プロバイダーへの更新料)をふくむ。

============================================

【キャンペーン開始時点からの累計】 

   期間:1997年11月~2000年12月
   
   総収入 1,225,725
   総支出 1,245,342

   収支(赤字)△19,617

収入累計内訳
  カンパ    682,489
  講演料・稿料 292,000 
  各種売り上げ 247,436 *註4

支出累計内訳
  印刷費    144,195
  通信費    151,297 *註5
  交通・宿泊費 224,566
  人件費      6,121
  現地支援   386,579(ブロッケード会計へ)
  資料仕入れ  325,876
  その他      5,604

*註4:ビデオ、脚本、ブックレット、絵葉書、ステッカー、その他資料の売り上
げ。未収金3,200(ビデオ代金)をふくむ。
*註5:ホームページ開設費用および維持費(サーバー使用更新料)は「通信費」に
ふくめました。(前回の会計報告では「その他」に分類していたのを改めました。)
============================================
★★★前回の会計報告(通信115号、99.12.29)以降、2000年12月24日までに、下記
の方々から、合計116,340円のご支援をいただきました(資料購入・カンパ・講演料
など、順不同)

長井 聖治さま(境市)、吉川 仁さま(犬山市)、星川淳・星川加代子さま(屋久町
)、大澤 晶子さま(川崎市)、野村 民夫さま(東京都)、兼崎 暉さま(北九州市)、
反原発出前のお店・佐賀店さま(佐賀市)、鎌田 真弓さま(日進市)、吉岡 正壽さま
(幸手市)、先住民族の10年市民連絡会さま(川崎市)、原子力資料情報室さま(東京
都)、海野道郎さま(仙台市)、嘉田由紀子さま(大津市)、ウィンドファームさま
(福岡県水巻町)、毎日新聞東京社会部さま(東京都)、藤村美穂さま(佐賀市)、加
藤めぐみ様(所沢市)、地球の友オーストラリアさま(ブリズベン市)、アレック・マ
ーさま(キャンベラ市)、匿名希望さま2名

今回報告分のキャンペーン会計に繰り入れさせて頂きました。たいへん助かりまし
た。有難うございます。
============================================
★★絵葉書セット、ビデオなど、在庫があります。まだの方はぜひお求めください。
みなさま、どうか良い新年をおむかえください。

For a nuclear-free future!
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2000.12.03 ジャビルカ通信 第137号

(編集の都合により、137号を先にお送りします。)
(136号は追って配信いたします。)
 

2000.12.03 ジャビルカ通信 第137号
 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃ カカドゥ国立公園に関する世界遺産委員会ケアンズ決定 ┃
 ┃                           ┃
 ┃ 議事録の文言をめぐって、最終日まで波乱       ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
本号では、世界遺産委員会の最終日(12月2日)に採択された議事録草稿 (rapport projet du Rapporteur) に収録されたカカドゥ国立公園に関する委員会決定の部分を翻訳して紹介します。原文はフランス語と英語です。

(例によって、フランス語のアクセント符号が文字化けするかもしれませんが、悪しからず。)

ここで紹介するテキストは会議で配付された草稿(ユネスコ公文書番号: WHC-2000/CONF.204/21)を本会議で審議した結果(後述のように最後までもめました)、部分的に修正されたテキストに基づいています。この修正稿は、まだ文書の形では配付されていませんが、細川とジャスティン(グンジェイッミ先住民族法人の書記長さん)がそれぞれ聞き取ったノートを照合して確認しました。

いずれユネスコのホームページに掲載される公式議事録は、この修正稿にもとづいてユネスコ世界遺産センター事務局(=世界遺産委員会の書記局をつとめる)が決定稿を作成します。執筆責任者は、今回から委員会書記に選ばれたドーソン・ムンジェリ氏(ジンバブエ国立博物館館長)ですが、細かい字句の修正や翻訳の調整には書記局の手が加わり、またケアンズ会議の議長をつとめたオーストラリアのピーター・キング氏(世界遺産委員長)の意向もかなり影響するものと思われます。

本号で、まず翻訳文を示し、次号(通信138号)で細川のコメントを追加します。翻訳文中「※※※」印をつけた箇所は、次号でのコメントにおいて重要な問題点を指摘することを示します。

ジャビルカ通信は、いつもは「転載自由」ですが、以下の翻訳の部分(=====で区切った部分)だけは、大急ぎでやっつけた仮訳であるということと、ユネスコとの著作権の関係もありますので、無断転載はしないでくださいね。転載・印刷配付などをご希望の方は、必ず、細川に御連絡ねがいます。ジャビルカ基金のほうでも近々(なるべく年内に)頒布版を作成する予定です。訳しあげねた部分は原文を付記しておきますので、より適切な訳語へのご教示、ぜひお願いします。(政府間協定文書ですので、形式ばった表現や迂回的な表現が多いことは仕方ありません。)

なお、修正前の草稿の電子テキスト(PDF、フランス語版と英語版、いずれも正文)は入手してありますので、ご希望の方は御連絡ください。
============【無断転載禁】===============

議事録参照番号 VIII.26
(フランス語版 pp.41-46, 英語版 pp.35-39)

カカドゥ国立公園(オーストラリア)

本委員会は、1999年7月の世界遺産委員会第3回特別会議(★細川註:ジャビルカ通信110号、112号、113号を参照)において、カカドゥ国立公園の保全状況を同公園内の飛び地(enclave) において開発中のジャビルカ鉱山借地との関係において検査したことを想起する。

本委員会は、本件複合遺産(文化遺産かつ自然遺産)の保全状況を、自然価値 (les valeurs naturelles/natural values) と文化価値 (les valeurs culturelles/cultural values) とに分けて順次検査した。
■自然価値

本委員会は、国際科学評議会 (以下ICSU) の選任した独立科学パネル(以下ISP)が IUCN(★細川註:国際自然保護連合)の代表者1名をともなって2000年7月にカカドゥ国立公園およびジャビルカ鉱区とレンジャー鉱区に調査に赴いたとの報告を受けた。

ICSU-ISP報告の結論についてのブライアン・ウィルキンスン教授の発表(文書番号WHC-2000/CONF.204/INF.20)(本議事録の付属文書9番)(★細川註:仏語草稿・英語草稿とも会議コードが「CONF.203」となっているが 204の間違いと思われる)、IUCNが本委員会に提出した声明書(同10番)、両者に対するオーストラリアの監督科学官の反論(同11番)、以上に本委員会はそれぞれ留意した。

世界遺産センター(★細川註:パリのユネスコ本部にある世界遺産条約の実務部局)所長は本委員会に対し、北部準州政府と連邦政府のあいだに北部準州における鉱山操業をさらに規制する措置についての正式な合意が2000年11月28日付けで成立した旨、締約国(★細川註:オーストラリア連邦政府のこと、以下同じ)から連絡があったことを報告した。

オーストラリア政府代表は、ICSU-ISPとIUCNが2000年7月の調査団に建設的な姿勢で参加したことに対し、両者に賛意を述べた。鉱山会社である (株) オーストラリア・エネルギー資源(以下ERA)の所有者の変更をめぐって生じている憂慮に関しては、環境・文化遺産大臣(★細川註:ロバート・ヒル環境相のこと)が2000年9月22日付けでERAあて送付した書簡において、1999年7月に世界遺産委員会に対してERAがおこなった約束を守るよう再確認した旨、オーストラリア政府代表から本委員会に報告があった。この大臣書簡の写しはERAの新しい親会社であるリオティント社にも送付された。ERAからは2000年10月31日付けで約束を遵守する旨、返信があった。

オーストラリア政府代表は、his full respect for ISPおよび 監督科学官の環境測定に関する忠告を全面的に尊重する旨を述べた。同代表はまた、ジャビルカにおける環境測定をすみやかに実施すべく通常の予算配分手続きの範囲内で (dans le cadre des proc仕ures normales d’ouverture de cr仕its budg師aires/as part of normal budgetary appropriation procedures) 予算措置にむけた努力をおこなう (allait rechercher des fonds/would seek resources)、と宣言した。

ジャビルカ鉱山・製錬所計画に関する独立科学諮問委員会 (un Comit consultatif scientifique ind姿endant/an Independent Science Advisory Committee) の設立をISPが勧告した点(★細川註:ジャビルカ通信134号のウィルキンスン博士の発言を参照)に関して、オーストラリア政府代表は、既存の法制度で定められた科学評価委員会(★細川註:鉱山省の監視委員会などだが、現行では連邦政府や北部準州政府が恣意的に選任してきたため中立性・独立性を欠いている)の委員長および正式委員の過半数の選出をオーストラリア国内の学術団体、たとえば豪州科学アカデミーや工学・技術分野でこれに匹敵するアカデミーなどに委ねる旨、本委員会に通知した。※※※
カカドゥ国立公園の自然価値の保全に関して、本委員会は次の通り決定した。

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世界遺産委員会第24回通常会議(★細川註:ケアンズ会議のこと)は:

1. ICSUは監督科学官 (SS) およびIUCNとの協力のもとにISPの作業を継続し、ISP第1報告(★細川註:京都会議1998での要請をうけてパリ会議1999に提出された評価報告、ジャビルカ鉱山の環境影響評価には科学的に不確定の部分が残るとした)に対する監督科学官の反論内容を審査すべし、との1999年7月の世界遺産委員会決定を想起しつつ

下記の点に留意する。

2. 政府が承認を与えたジャビルカ現地製錬方式 (solution propos仔 de broyage d’uranium   Jabiluka/Jabiluka Mill Alternative) に起因する可能性があると現在把握しうるカカドゥ世界遺産地区の自然価値への主だったリスクを監督科学官はすべて特定した、というのがISPの総括的な結論であること。これらのリスクが詳細に分析され、高度の科学的確かさをもって定量的に把握されたこと。その分析によって、リスクは非常に小さいか無視しうるほど小さいことが証明されたこと、そして、承認されたジャビルカ現地製錬方式にもとづく開発はカカドゥ国立公園の世界自然遺産としての価値を脅かすものではないと言える (ne devrait pas menacer/should not threaten) こと。

3. ISPの評価は、1999年4月に監督科学官 (SS) が世界遺産委員会に提出した報告(★細川註:京都会議での要請に応じてオーストラリア政府側が提出した環境影響評価報告)が記述したジャビルカ現地製錬方式だけを対象におこなわれたものであること。※※※

4. ジャビルカ計画のいかなる新しい側面 (tous les nouveaux aspects de la proposition de Jabiluka/all new aspects of the Jabiluka proposal) も監督科学官による正式な評価の対象となること(★細川註:計画を少しでも変更した場合は環境アセスメントをやりなおす、ということ)、そして、それによって生ずる重要な変更はすべて後述する科学評価委員会の委員長の審査を受けること、この2点をオーストラリア政府が保証したこと。

5. 操業計画の最終的な設計 (la conception finale du projet/the final design of the project) において従うべきとISPがみなす手順に関して、また、継続すべき規制と環境測定の手順に関して、ISPが数々の勧告をおこなったこと。※※※

6. オーストラリア政府がISPおよびIUCNの総ての勧告の意図するところを受容したこと。とりわけ、

(a) オーストラリア政府は、ISPが独立科学諮問委員会の設立を勧告するにあたって指摘した必要性に答えるべく、既存の法制度で定められた科学評価委員会の構成および役割を見直す決定をしたこと。すなわち、委員会の長と正式委員の過半数はオーストラリアの科学者・工学者を代表する最もしかるべき組織、おそらくは豪州科学アカデミーによる選出を経て任命されるようになること。この委員会は公開性をもち、独立の立場で、いかなる制約をも受けずに報告をおこないうること。

(b) 2000年11月7日付けで成立した連邦政府と北部準州政府のあいだの合意によって、監督科学官の監督役割が強化されたこと

7. ジャビルカの環境アセスメント作業を通じて鉱区および周辺地区の自然価値に関する総合的な調査分析と記載がおこなわれてきたことを踏まえ、オーストラリア政府がこの作業をISPとIUCNの勧告するやり方でさらに継続する意志を表明した (a entrepris d’師endre/has undertaken to extend) こと。

世界遺産委員会は:

8. ISPとIUCNの働き、および両者の勧告へのオーストラリア政府の対応について、満足の意を表明する (se d残lare satisfait/welcomes)。

9. オーストラリア政府に対し、ISPとIUCNの勧告する景観・生態系全般の分析と測定計画を実施すべく、かつ、監督科学局 (OSS) に水資源分析の専門家を配置すべく、できるだけ速やかに必要な予算人材措置をとる (affecte de ressources/allocate resources) ように要請する。

10. 以上をふまえ、ジャビルカにおける採掘および製錬について現在承認されている計画は、人々の健康あるいはカカドゥ国立公園の生物系・生態系を脅かすものではなく、これらに対する1998年の調査団(★細川註:京都会議前に現地査察したフランチオーニ調査団のこと)の推定した危険性 (avait estim市 menac市/believed to be at risk) は解消されたものと結論する。

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■文化価値

世界遺産センター所長は、第24回幹事国特別会合(★細川註:本委員会に先立ってケアンズで開かれたビューロー7ヶ国会議)で決まった本委員会への答申をまず紹介した。その後、所長はミラル土地権代表者であるイボンヌ・マルガルラから2000年11月28日付けの書簡を受け取ったことを明らかにした。同書簡(本議事録の付属文書12番)によれば、ミラルとオーストラリア政府とのあいだで行われていた文化遺産保全に関する新たな手順(すなわち幹事国会議の答申が描いた方向性である)をめぐる討議は決裂した。

ICOMOS(★細川註:「世界記念物遺跡評議会」、世界文化遺産の価値評価や保全策についてユネスコに助言する専門家の国際組織)の代表は、カカドゥの第1期と第2期(★細川註:カカドゥ国立公園は第1期~第3期の3地域にわけて段階的に公園指定がおこなわれ今日の公園範囲が確定した;ジャビルカ周辺は第1期指定区域)、が世界遺産登録候補として挙がった際、ICOMOSがおこなった評価作業を回顧し、当初はこの地域の文化価値はもっぱら考古学と岩壁画にもとづいて評価されたこと、そして第3期の追加登録の際になってようやく生きた文化遺産(★細川註:アボリジニーの独自文化の存続を意味する)という側面が評価されるようになったこと、を述べた。

ICOMOS
代表は、文化遺産への影響評価をおこなう上で文化地図作成が不可欠であることを強調し、ミラル伝統所有者たちとオーストラリア政府のあいだの交渉が暗礁に乗り上げていることを認めたうえで、ICSU-ISPが科学問題の評価をするにあたって採用したのと同じ手順をふむべきではないかと示唆した。すなわち、独立した国際グループを設置して、ミラルとオーストラリア政府の双方と協議し、問題打開の道をさぐる、という手順である。

タイ政府代表は、ジャビルカにおける文化問題を扱うのに独立した国際グループを設立することは内政干渉になるおそれがあると警告した。

ハンガリー政府代表は、カカドゥ国立公園の生きた文化遺産の際立った重要性に言及し、本委員会に報告された現状に対して憂慮を表明した。

オーストラリア政府代表は、ミラル伝統所有者とオーストラリア政府の対話が決裂したことに憂慮の念を表明したものの、これは対話過程の「終了」ではなく「中断」であるとの解釈を示した。環境・文化遺産大臣はいつでも交渉を再開する容易があると、オーストラリア代表は本委員会に通知した。対話が中断した原因を説明するにあたって、同国代表は、オーストラリア政府がミラルに対して金銭的条件(incitations financi俊es/financial incentives)を提示したとの情報が一部に流れていること (allegation) に対するミラル側の憂慮がイボンヌ・マルガルラからの書簡において述べられていることに言及した。その類いの申し出をオーストラリア政府側がおこなったことは一度たりと無い旨、同代表は強調した。※※※

オーストラリア政府代表は本委員会に対し、同国政府が 1999年7月の委員会で約束した諸事項のうち、唯一果たせていないのが文化遺産管理計画の策定と文化地図の作成である、との見解を示した。彼はまた、ジャビルカ鉱山が待機状態で、環境管理をおこなっている段階にあり、商業生産(★細川註:本格的なウラン採掘)はここ当分のあいだ始まらないだろう、という点を指摘した。鉱山会社には文化遺産管理計画を準備する法的義務があり、オーストラリア政府は国内交渉を通じてできるだけ早くこの計画を準備するための適切な交渉枠組を見い出すべく努力している (souhaitait/was concerned)、と同代表は述べた。※※※

南アフリカ政府代表は、ICOMOSが提案した独立評価の方式に賛意を表明し、交渉進行役(recours aux bons offices/facilitator)の採用を示唆した。彼女(★細川註:南ア代表は駐フランス大使のツツキレ・スクウェイヴァ女史)は、カカドゥはオーストラリアにとってだけでなくすべての人類にとって価値のある場所であることをふまえ、外国からの進行役をふくむ交渉方式に同意するよう、オーストラリア政府に求めた。

フィンランド政府代表は、カカドゥの科学的問題を扱ったのと同様の作業方式を文化遺産の問題を進展させる上でも用いるべきである、と示唆した。

カナダ政府代表は、カカドゥの生きた文化価値の重要性を認め、本委員会の目的はまさにその保全であると述べた。ミラルと締約国政府の合意が不可能であるならば、第三者による調停を考慮すべきである。

パプアニューギニア政府派遣のオブザーバー(★細川註:非委員国ということ)は生きた文化遺産価値を世界遺産の認定と保全の手順の最初から認識しておくことが重要であると強調した。 

ICCROM(★細川註:「文化遺産保存修復国際研究センター」、ICOMOSとならんでユネスコへの助言をおこなう公式諮問機関)は、第24回幹事国会議(★細川註:99年7月)で取りまとめられた答申に当時は賛成したが、今となっては伝統所有者との対話を含むような新しい手順がはたして確立できるのかどうか憂慮するに至っている、との考えを述べた。

ミラルの土地権代表者であるイボンヌ・マルガルラが本委員会での発言を許可された。彼女は自分のくに(すなわち伝統領土)とジャビルカの聖地・危険な (FFF/the sacred sites and dangerous sites) について話した。彼女は、自分のくにが危機にさらされているのは、聖地の存在について彼女たちが嘘をついているとオーストラリア政府が言っているからであるとして、世界遺産委員会の支援を要請した。オーストラリア政府代表は、環境・文化遺産大臣はミラルが不誠実な行動をとっていないと信じている (did not believe that the Mirrar were behaving dishonestly) ことを強調した、と述べた。※※※
カカドゥ国立公園の文化価値の保全について、本委員会は以下の決定を採択した。

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11. ジャビルカにおけるウラン採掘・製錬計画がカカドゥ国立公園の生きた文化価値におよぼす深刻な悪影響がまだ存在していると信じる伝統的所有者たち(★細川註:ミラル氏族のこと)の憂慮に、本委員会は留意する。

12. ジャビルカの文化地図の作成(★細川註:ジャビルカ鉱区におけるアボリジニーの聖地の所在の詳細な記録作成のこと)と文化遺産管理計画の策定を求めた本委員会の以前の決定(★細川註:京都会議1998での決定のこと)が現時点では実現できないこと、および総ての当事者の対等協力関係 (partenariat/partnership) にもとづく何らかの新しい方法 (une nouvelle approche/an approach) (★細川註:英語版には「新しい」がないが、これは仏語版のほうが正しいと思われる)が必要である、と本委員会は考える。

13. カカドゥ国立公園の管理運営における文化遺産問題の解決にむけての活動にICOMOSが参加の意向を第24回幹事国会議(パリ2000)において表明したことを、本委員会は想起する。※※※

14. 締約国には、文化価値に関するあらゆる未解決の問題 (les questions en suspens/any outstanding issues) に対処する (traiter/address) ための新しい方法を検討する (師udier/consider) 用意があるということに、本委員会は留意する。 締約国は、新しい如何なる手順 (processus/process) を調停する (aurait recours aux bons offices/would facilitate)(★細川註:ここのところの文言が会議ですごく揉めました/後述のコメント参照)に際しても、伝統的所有者およびその他の国内当事者(★細川註:鉱山会社や北部準州政府を示唆する)との協議をふまえるものとする。

15. 締約国とミラル伝統所有者のあいだの対話が中断したこと (l’interruption actuelle/the current interruption) に、本委員会は失望を表明する。

16. カカドゥ国立公園の生きた文化価値の重要性を、本委員会はあらためて確認する。

17. 締約国とミラル伝統所有者が、建設的対話を通じてカカドゥの文化遺産保全にむけた手順を協力して具体化するための (a fin de mettre au point/in order to develop) 努力を再開し継続するよう、本委員会は促す。

18. 対話の中断状態が続くようであれば、締約国とミラル土地所有者は、2001年の第25回委員会(★細川註:フィンランドで開催予定)までに手順についての合意を達成すべく、第三者の調停をうけいれること (avoir recours aux bons offices pour ce dialogue/a facilitated dialogue) を検討するように、本委員会は要請する。※※※
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============ ここまで【無断転載禁】===============

翻訳おわり

実はこの議事録の文言をめぐって、ケアンズ会議は最後の最後まで揉めました。議事録は、通例、書記(幹事国のうち1ヶ国がつとめる)と書記局(=世界遺産センターの実務スタッフ)が作成した草案を本会議の最後に採択されるのですが、修正はごく部分的な調整程度ですむのが普通です。ところが、土曜日の夕方4時から始まる予定だった議事録採択のセッションは、そもそも草案そのものの文言調整が難航し、始まったのは5時半頃でした。全部で100頁程度(付属文書は除く)の草稿のうち、ジャビルカ問題は実に4ページ半を占めています。登録済みの世界遺産の評価の議題は、ふつう、1件あたり長くても2~3段落、ほとんどは数行の記載ですむことを考えると、いかに複雑で難しい問題であるかが分かります。で、この草案の審議が始まると、またもや紛糾。オーストラリア政府が、書き直しや追加をかなり多く提案し、また他の国の代表からも字句の意味不明な点について、次々と意見が出され、書記のドーソンさんは「またまたカカドゥで時間がかかりますね!」と苦笑。カカドゥだけで20分もかかりました(草稿全体の審議は2時間弱)。

上記の議事録に対してのコメントは次号で述べたいと思います。いま、ふたことだけ述べてと、
1) 本会議での深刻な意見の対立にもかかわらず、また、オーストラリア政府が必ずしも専門家 (ISP, IUCN, ICOMOS, ICCROM) からの勧告事項に十分な対応を示していないにもかかわらず、また鉱山操業計画のなし崩し的な変更の可能性が高いにもかかわらず、生物系・生態系レベルでの悪影響は無いという結論に飛躍してしまっていること
2) すでに何度も政府とアボリジニーの交渉は暗礁に乗り上げているのに、まだ交渉を見守る(交渉の継続を強いる)という委員会の優柔不断さは、政府よりもアボリジニーにより大きな負担をかけること
などの理由で、たいへん不当で、分かりにくく不透明な決定であると細川は考えます。部分的には、重要な論点もあり、評価すべき面もありますが、それは次号にて。
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